『初桜に愛舞い降りて〜宿世の契り〜』【30】

「千珠……全てをだ」
 追い立てるように、泰成が再度同じことを口にする。
「で、でも……っ!」
 千珠の躯の芯に甘い疼きが走った。泰成の指が乳首を撫で、感じる首筋に唇を這わせたからだ。
「話してほしい。私との間に、隠し事はしないでほしい」
 千珠は躯を震わせながら、腰をしっかり抱く泰成の手に触れた。
「言いたくないのかもしれない。だが、言ってくれなければ、千珠の嫌な記憶を塗り替えて上げられない」
 そう言った瞬間、千珠の腰を抱く彼の手に力が入った。
 ここでは絶対に引かないと告げるように。
 こうなった時、泰成は意地でも引かない。これまでの彼に対する千珠の接し方を見ていれば、それぐらいわかった。
 千珠はとうとう覚悟を決めて、彼の手に触れていたそこを強く握る。
「あの……、わたし……まずキスをされて……えっ?」
 そう伝えるなり、千珠の乳房に触れていた泰成の手が離れ、変わりに顎を捉えられる。
 彼の手で促されて振り返ると、泰成に口づけされた。
「っぁ……っんぅ!」
 甘く、躯の芯が蕩けそうなキス……
 泰成を誘惑するような甘い声が、何度も千珠の鼻を抜けていく。
 居ても経ってもいられず、千珠はゆっくり躯の向きを変えた。彼の背に両腕を回し、体温を感じ合う。
 泰成の順応は早い。
 彼の知らない言葉、千珠が使い慣れた言葉を話せばその都度意味を訊いてきた。
 それが功を奏し、今では千珠の言葉をすぐに理解し反応を示す。
 たった数日しか話していないのに、知らない言葉を覚えていってくれたのは、千珠を知りたいと思ってくれているからだろう。
 そしてこの瞬間も、泰成は千珠に何があったのか全て知ろうとしてくれていた。
 
 純粋に、千珠を想ってくれているから……
 
「……そして?」
 泰成が、千珠の唇に優しく囁きかける。
「そして……、彼の舌がわたしの口の中に滑り込んで……っんぅ!」
 熱くねっとりした泰成の舌が、千珠の口腔で蠢く。さらに絡ませと促され、千珠は濡れた舌を絡ませた。
 どんどん躯の芯が疼いていく。下腹部奥は火照り、秘所はピクピクと期待するように動くほどだった。
「ふぁ……っんん、はぁ、っ……」
「……次は?」
「つ、次?」
 情熱に駆られた囁き声で訊ねると、泰成が力強く頷いた。
「そう、次だ」
 最初、泰成の言っている意味がわからなかった。
 でも、この行為がどういう経緯で始まったのかを思い出し、千珠は甘い吐息を零しながらゆっくり口を開いた。
「彼は……腰紐を解いて、わたしの胸に触れて……あっ!」
 泰成が既にはだけている小袖の袷に手を滑らせ、忍ばせてきた。
 豊かな乳房を手で包み込み、慣れた手つきでそこを揉みしだく。
「ぁっ、んぁっ!」
 泰成の指が乳首を挟んだ。刺激を与えては抓み、捏ねくり回す。
「ここは? 触られていない?」
 千珠は何度も頭を振った。
「あっ、あの……彼の唇が……」
「……っ、くそ!」
 初めて聞く泰成の嫉妬に、躯が燃え上がった。
 その熱を煽るように、泰成の唇が千珠の乳首を捉える。優しく刺激を送っては、ちゅっちゅと音を立てる。
 泰成の肩を掴む千珠の躯は、押し寄せる快感の潮流に我慢できなくなり小刻みに震え始めた。
「もしや、甘い蜜のあふれる……秘めやかなところも?」
「そ、それ以上のことは……されてない!」
 手の甲で喘ぎを殺しながら、千珠は叫んだ。
「では、これで禊は終わりだ。そして、これからはさらに記憶を塗り替える。千珠は私だけのものだと、その躯に刻み込む!」
 乳房に触れていた泰成の手がだんだん滑り下り、平らなお腹を手のひらで包み込む。
「や、泰成さま?」
 さらに彼の手が下へ向かう。黒い茂みを掻き分け、秘められた蕾を擦り始める。
 強烈な刺激に襲われ、千珠の躯はビクンッと飛び跳ねた。大きく息を吸って、何度も頭を振る。
「だ、ダメッ……っぁ、ひゃああ!」
 泰成は千珠の腰を片手で抱き、そのまま持ち上げた。膝立ちになった千珠は、慌てて彼の両肩に手を置き躯を支える。
 直後、彼の指が襞に沿って動き始めた。
「あっ、あっ……っぁぁああ」
 襲いかかる快感から逃れようと背を丸めるが、零れるのは甘い喘ぎばかり。
 千珠は泰成の衣をギュッと掴んで、送られる刺激に耐えるしかできなかった。
 蜜口から愛液があふれ、彼の指の動きが滑らかになる。くちゅくちゅと淫靡な音を立てて、千珠の欲望を煽る。
「ああ、私の手で千珠の躯がどんどん花開いていく」
「そんな……風に、言わないで……」
「ここはどうなっているだろうか?」
 泰成は千珠の濡れた襞を押し開き、さらに愛液が滴り落ちる蜜口へ指を挿入した。
「ひぃ……っああ! ……うん、はぁ、っんぁ!」
 膣壁を擦られるたびに収縮が起きて、泰成の指をギュッと締め上げる。
 どんな状態なのかわかっていながら、彼は愛撫の手を止めず、何度も指の抽送を繰り返した。
 千珠は唇を噛み、襲いかかる快楽に立ち向かう。
 だが、それも長くは続かなかった。
 尾てい骨から脳天へと突き抜ける甘い痺れが走るたびに、堅く築いた城壁はもろく崩れ落ちていった。
「んっぁ、ダメっ……あんっ……、ああぁぁ」
 千珠の躯がビクンとしなる。どくどくと血液が流れる音が耳に響き、それ以外何も聞こえなくなる。
 泰成の与えてくる快感の世界に囚われた瞬間だった。

2016/01/05
  

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