「千珠!」
千珠の大腿を押し開いて、泰成は腰を落とした。硬くそそり勃つ彼自身を、濡れそぼった蜜口にあてがい、そのままゆっくり膣内へ侵入させていく。
「ああっ、はぁ……んんっ!」
膣壁を押し広げながら彼自身が入ってくる。軽く引き、そしてさらに腰をずんっと押し付けた。
甘い喘ぎが、とめどなく千珠の口から漏れる。
頭の先からつま先まで駆け抜ける甘美な疼きに成す術もなく、千珠は泰成が送り込んでくるリズムに身をゆだねた。
「千珠……っく……、ああ、なんて素晴らしいんだ!」
彼のものがすっぽり包み込まれると、泰成は律動を速める。千珠の膣内を掻き回すようにして、奥深くまで彼自身を突き刺した。
「んぁあっ! は……あ、ああ……っく、やぁん!」
泰成が抽送をするたびに、ぐちゅぐちゅと淫靡な音を立てる。
その音に交じって、彼の荒々しい息遣い、千珠の喘ぎが響く。この局は甘い空間と化した。
速いとは言っても、彼の腰つきはお互いの快感を生み出すため、時には焦らすように動いては千珠の喘ぎを引っ張り出させた。
でもその行為が長くなればなるほど、だんだん泰成の突きが激しくなってきた。
「千珠っ! もっとそなたを……私しか考えられないようにしたい。ああ、この私が女性に対して、このような感情を抱くとは」
彼も千珠と同じように、情欲の嵐に翻弄されているとわかった。それでいて、この快楽をもっと長引かせたいとも思っているのも。
「いいの、もっと……めちゃくちゃに……っあ、やぁ……んんっ、んぁっ!」
いきなり泰成が千珠を引き寄せた。対面座位になり、下から強く突き上げる。重力に従って、硬く漲った彼自身が膣奥にあたるたび、襲いかかる狂熱に身を焦がす。さざ波のような潮流が、どんどん千珠に襲い始めた。
それが大きな波動になるのに、さほど時間はかからなかった。
だんだん甘い疼きに耐えられなくなり、千珠はすすり泣きに似た喘ぎを漏らし始めた。
「ダメ……もう、んぁあ……はぁっ! 泰成、さま! わたし、もう……っんぁ、ああっ!」
「千珠っ!」
泰成が咆哮を上げて、力強い突きを繰り返す。
背中に回された両腕がわずかに上に移動し、千珠はさらに泰成と密着した。豊かな乳房が揺れ、彼の胸板に擦れる。
相手を誘うその淫らな振る舞いに、普通なら羞恥心を覚えたかもしれない。だが、今は押し寄せる甘い疼きだけに集中していた。
「あっ、……ダメんんぁ、もう……っ、きゃああぁぁーー!!」
「ううっ!」
彼の熱い迸りを最奥で受け止めた瞬間、何かが爆発したのではないかと思うくらいの悦びが襲ってきた。
四肢が硬直し、自分の悲鳴が遠くでこだましているように聞こえる。
男女の営みでしか得られない、躯が浮いてしまうほどの強烈な快感。
もっとじっくりと狂熱を貪りたかったが、ふっと力の手綱を離した瞬間一気に急降下した。
「はあぁぁ……」
甘い吐息とともに、千珠の四肢がゆっくり弛緩していった。
対面のまま、何にも代え難い宝だと伝えるように千珠を抱きしめていた泰成だったが、彼女の顎を掴んで面を上げろと促す。
口づけを求められ、千珠は素直に唇を開く。彼はキスの合間に、何度も千珠の名を呼び続けた。
千珠の口腔に舌を突き入れ、舌を絡ませる。それだけではまだ足りないと言いたげに貪るその口づけに、頭の芯がまた痺れた。
すると、千珠の膣内にまだ収まっている泰成自身が芯を持ち、膣壁をゆっくり押し開くほど硬く大きく漲ってきた。
「あっ……ぁ」
快感に達した躯は敏感になっていて、ちょっとした動きで下肢が震える。
「私は、千珠がここにくるまでの生活を知らない。そして……それを話してもらっても私には全てを理解することはできないだろう。だが、これからも未知なる話を聞かせてほしいと思っている。そして……ともに笑い合って過ごしていきたい」
「ええ……、ええ……」
千珠は泰成の首筋へ顔を埋めた。目の奥がジンジンと熱くなり、嬉し涙が零れて彼の肩を濡らす。
泰成は千珠の腰と背中に手を置き、ゆったりとしたリズムで再び突き上げ始めた。
「千珠?」
歯を食い縛って喘ぎ声を必死に抑えている千珠に、泰成は彼女の耳殻に舌を這わす合間に小さな声で囁いた。
「こんなことは考えたくもない。だが、これだけは告げておく。千珠が私の傍を離れる日が……もしくるならば、今度は私が千珠の元へ駆けていきたい。それほどそなたを手放したくない」
泰成の言葉に、千珠は息を呑んだ。
出会ってやっと丸一日過ぎたぐらいなのに、そんな嬉しい言葉を言ってくれるなんて……
千珠は歓喜のあまり言葉にできず、そっと俯いて彼の肩にキスを落とした。
今の時点では、元の世界へ戻れる日がくるとは到底思えない。
でも、千珠は泰成の言葉にただ頷いた。
この時の千珠は、何年にも渡り、平安時代の四季とともに年を重ねていくと思っていた。
もし泰成との別れが訪れると知っていれば、1日1日をもっと大切に過ごしていたかもしれない。
――5日目。
「届きましたわ! 蔵人少将さまから3日夜の餅≠ナすよ!」
キャァーと嬉しそうに声を上げる小牧。
そんな彼女をよそ目に、千珠は怠そうに吐息を零した。
それもそのはず。この3日間は泰成に求められ続けて、ほとんど眠ってはいなかった。
しかも、彼の求め方は千珠が付き合っていたどの男性よりも執拗で、躯がバラバラになってしまいそうなほど彼女を愛し尽くした。
それが嫌なのかと問われれば、そうとは言い切れず。
ああ、こんなにもエッチだったんだ……
昨夜の濃厚なセックスを思い出し、千珠の頬が自然と染まった。
泰成の興奮や強い求め方が頭をよぎっただけで赤面するなんて……ああ、恥ずかしい!
千珠は気持ちを切り替えたくて、局をあちらこちらへと動き回っている小牧に目を向けた。
「ところで、小牧。その3日夜の餅≠チていったい何?」
「ああ、千珠さまのお国ではそう呼ばないんですね。それはですね――」
にっこり微笑んだ小牧が、いそいそと千珠の元へ近づく。
「千珠さまを妻に娶ったという儀式ですわ!」
小牧の言葉に、千珠は目をぱちくりさせた。