4万HIT記念企画♪
Summer vacation 4 EXCESS STORY

『友情』

side:寛

 彰子に何も聞かれなくて、本当に良かった。
 俺と木嶋が……何を話したかって事を。
 もし、木嶋があの時とった行動が本心でないと知ったら……彰子は絶対怒るに違いないから。
 
「寛、プリクラ撮ろうよ、プリクラ」
 目をキラキラと輝かせて言う彰子に、俺は微笑んだ。
「あぁ、いいよ」
 腕を絡ませくると、彰子の胸が俺の腕に押しつけられる。その柔らかい感触が、俺を欲望の渦に巻き込み、今この瞬間にでも…この手で味わいたいと思ってしまう。彰子のあの発言で、辛抱を余儀なくされてしまったというのに。
 
 木嶋……
 俺、この幸せを実感すればするほど、お前の助言が脳裏に過ってくるよ。
 
 
* * * * *
 
『確かに、俺は彰子ちゃんの事が好きだよ。綺麗だし、性格もいいし、はっきりモノを言うしさ』
「うん」
 木嶋が、彰子の長所と短所を好ましく思っていると知って嬉しい気持ちもあるが、そんなに彰子の事を知って欲しくないという気持ちもあった。
 しばらく沈黙が続が、突然木嶋がそれを破った。
 
『カンさ、今日…彰子ちゃんに愛されるのが当たり前って態度をとっていたよな』
 俺が?
「そんな態度とってない」
 そう、俺はそこまで鈍感じゃないぞ。
『じゃぁ、何で彰子ちゃんを一人きりにした? 友達の誰かが、カンの目の前で…手を出すヤツがいるとは思わなかったからだろ?』
 言葉に詰まった。
 何故彰子を一人にしてしまったのかはわからない。だが、木嶋が言うように、俺は友達を信頼していた。その気持ちは、確かに根底にあった。だから、俺は彰子を一人にしても大丈夫だと思ったのかも知れない。 
『……俺の目から見ても、彰子ちゃんはカンを好きだし、カンも彰子ちゃんを好きだって事、俺を殴った態度でよくわかったよ。だけど、それだけじゃ上手くいかないぜ? それが当たり前だ、当然だと思ったら……いつか、俺みたいになるぞ』
 俺は、頭を殴られた気がした。
 木嶋の……最後の言葉を聞けば、誰だって正気にさえなる。
 なぜなら俺は知ってるから。木嶋が愛する彼女と…別れたのを知ってるから。
『さっき言ったように、俺は彰子ちゃんの性格って好きだ。でもそれは、恋じゃない。……だけどな、今はまだ恋には発展していないってだけで、それがいつ恋に変わるか、誰にもわからないだろう? それは俺だけじゃないぞ? ……なぁ、カン。今日のお前の態度、彰子ちゃんの彼氏として最低だった。俺は、それをカンにわからせる為にあんな態度を取ったけど、あぁいう事はこれから先いくらでも起こるぞ』
 寛は、明かりが灯らない彰子の部屋を眺めながら、木嶋の言葉を反芻していた。
 木嶋は……いつか現れるだろう男の存在を、俺の前に呈示して見せたんだ。俺が、彰子を放ったらかしにしている間に、横から他の男がさらっていく姿を。
 
「木嶋、ごめんな」
『いいよ。俺も、あそこまでする必要あったのかなって思ってるし。……でも、彰子ちゃん可愛かったな』
 木嶋が、冗談を言って場を和ませようとしているのがわかったが、やっぱり誰かが彰子に興味を持つのは許せなかった。
「木嶋」
『おっと、わかったわかった。もう言わないよ。……だけど、カン。お前が、もし彰子ちゃんをもう一度あんな目にあわせたら、俺どうするかわからないぞ?』
 これは、木嶋が冗談で言ってるのではないとわかった。
 そう、恋なんて……どう転ぶかわからない。
「わかってる。俺、彰子を大事にするよ」
 
 
* * * * *
 
「寛。寛ったら!何意識を飛ばしてるの? ほら、笑ってよ」
 機械操作しながら、目の前に映る鏡越しに俺に向かって言ってきた。
「せっかくの写真なんだからさ」
 隣に並ぼうとしている彰子の後ろに周り、お腹に腕を回して抱きついた。
「寛…こんなポーズで撮るの?」
「あぁ」
 彰子は照れたように笑いながら…でも嬉しそうにパネルを操作する。
「5秒毎に連写が5枚だからね、いくよ」
 
 
 彰子の頬に頬を引っつけた。
――― カシャ。
 
 お腹の前で交差していた手を、上に伸ばす。
「ちょ、ちょっと寛」
「何?」
 ブラウスの上から、豊満な乳房に触れた。
――― カシャ。
 
 
「寛、あたしこんな写真」
「大丈夫、誰にも見せるんじゃないんだから」
 ゆっくり乳房を揉みながら、彰子の綺麗な首にキスをする。
――― カシャ。
 
 
「でもさ、やっぱり」
「何?」
 ブラの下で張り詰めている乳房を包みながら、親指でその中心である場所を撫でた。
「っぁ」
 彰子が、思わずのけ反る。
――― カシャ。
 
 
「彰子、俺お前を絶対大切にするから」
「寛、いったい…どうしたの?」
 躰をビクッと奮わせながら彰子は、上目遣いに俺を見る。俺の愛撫で、彰子の瞳は欲望で曇っていた。
 そんな目で見つめられたら、俺爆発しそう!
 その光る唇に、覆い被さるようにキスをした。
――― カシャ。
 
 
 出てきた写真を見て、彰子が思わず呻く。
「やだ! こんな写真を撮るつもりじゃなかったのに」
 手を震わせながら、彰子が顔を真っ赤にしている。
 寛は、その写真を覗き込んで思わず笑ってしまった。
「何よ。何で笑うの? あぁ……あたしって、こんな表情してるんだ」
 うっとりと恍惚に浸るその表情を見て、彰子は茫然としながら写真に見入ってる。
「見たくなかった?」
 そう尋ねると、彰子は思い切り振り返った。
「当たり前だよ。こんな、こんな恥ずかしい写真」
「わかった。俺がもらっとくよ」
「えっ、やだ。こんな写真捨てよう」
 捨てる? こんな綺麗な彰子の姿を?
「ダメだ。他のヤツに見られたくないから」
「ちゃんと粉々にしてから捨てるよ!」
「捨てるぐらいなら、俺がもらう」
 両者一歩も退かずに睨み合った。
 
「わかった。こうしよう」
 寛は、サッとその写真を取り上げると、備えつけのハサミで半分にした。
 そして、一方を彰子に渡す。
「ほら、これは彰子が大切に取っとくなり、捨てるなり…好きにしたらいい。俺は、これを大事に京都へ持って帰るよ」
 彰子が驚いたように目を大きく開けた。
 しかし、しばらくすると、その写真を彰子も直した。
「……寛の写真を捨てれるワケないじゃん!」
 顔を背けながら言う彰子がとても可愛くて、思わず笑みが零れた。
「そうそう、俺も彰子とのこの写真を捨てれる筈がない」
 そう、仲直りした日の証明となる……抱擁だから。
 
 寛は彰子の腰を抱くと、外へ促した。
 木嶋……俺、絶対この幸せを逃さないよう努めるよ。お前がせっかく忠告してくれたんだから、俺はそれを忘れないようにする。
 寛は、無言のまま木嶋に感謝していた。
 それにしても……あと1週間か。
 彰子の前で、我慢すると宣言したのに、プリクラの前でアレだもんな。
 俺もまだまだ……って事だな。
 
 この1週間、無事に耐えられますように。

2003/10/14【完】
  

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