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『Ring of the truth 〜込められた想い〜』【4】

 寛は、戸惑うあたしをあやすように……辛抱強く抱きしめた。
 落ち着くように、話が出来るように。
 
 バカな寛。
 いきなり抱きしめられて……しかもその前に裸を見られた話をしていたのに、落ち着けっていう方が間違ってる。
 でも、あたしは……躰を硬くしながらも、寛の肩に身を寄せてしまった。
 自分の躰の反応に、あたしは抗えなかった。
 初めて感じた欲望……寛にだけ引き起こされた感情を、あたしは拒絶する事なんて出来なかった。
 あたしは、律姉より大人だって思ってた。
 だから、律姉と同じ年の寛に対しても、あたしの方が気持ち的には大人なんだって思ってた。
 でも、寛に抱きしめられて……あたしは寛より年下なんだと実感させられた。あまりにもどっしりと 寛が構えたから……あたしを優しく包み込んだから。
 
 彰子は、寛の部屋から目を背けると、おでこを膝に押しつけ、目を瞑った。
 
 
* * * * *
 
「やだ……離して」
「嫌だ」
 彰子は、躰がブルッと震えたのを感じた。
 欲望と、拒絶が攻め合ってる結果だった。
「俺は、お前の部屋に一番に入れて欲しかった」
 えっ?
 彰子は、176cmの寛を見上げた。
「お前の部屋に電気がつく度、机に向かってる姿を見る度、セーラー服をモデルのように着こなす姿を見る度……俺は、彰子の部屋に入りたくて仕方なかった、お前に触れたくて仕方なかった」
 触れる? それって……。
 彰子は呆然となり、口をポカンと開けた。
「あぁ、そうだ。俺はお前を女として意識していたよ。お前の裸を見る前から……そう、セーラー服を着たお前を見た時から、俺の中で何かが弾けたんだ」
 彰子は腕を突っぱねて、寛と距離を取った。
 抱きしめられてるのが嫌だからではない、寛の表情全てをちゃんと見たかったらだ。
 
「それって、どういう事?」
 戸惑う彰子に、寛は苦笑いした。
「お前が好きだって事だよ」
「あた、しを? 寛が?」
 驚きで喘ぐ彰子の頬を、寛が片手で包み込んだ。
「あぁ、ずっと好きだった。だが、俺は17才、彰子はまだ13才……俺が手を出すには許されない年齢だと思わないか?」
 彰子の胸が高鳴った。
 寛は、あたしを好きだと言った。
 嘘……! こんなの夢だよ、あたしが夢見た幻想が、こうして起こるなんて、絶対ありえないよ!
「だけど、もう嫌だ。もう、自分を押え込んでいられない! 木嶋みたいに、お前の部屋に男が上がり込む姿を、抱きしめられてる姿を……俺は自分の部屋から二度と見たくない。それならいっそ……そう思って乗り込んできたんだ」
「寛……」
 彰子の激しい動悸が乳房を押し上げ、寛の胸に何度も何度も擦れた。
 
「お前、木嶋とキスしたのか?」
 ええっ?!
「何言ってるの! あたしは木嶋さんとはそんな事してない。あたしは、まだ誰ともそんな事してないよ」
 そう言うと、寛が思いっきり嬉しそうに、それでいて優しく微笑んだ。
「じゃぁ、」
 寛は顔を近づけると、彰子の唇にキスをした。
 その突然の行為に、彰子の躰は固まってしまった。
 それを察した寛が、ゆっくり唇をついばみ、甘く優しいキスを繰り返した。
 その優しいキスに、彰子の緊張はとけていき、とうとう喘いだ。
 寛は、顔を離すと、彰子のぷっくりした唇を指で撫でた。
「彰子のファーストキス、俺がもらったよ」
 甘い囁きに、彰子は思わず目を瞑った。
 ずっと思い描いていたキス。寛とのキス。
 夢で見たキスは何の助けもならない……寛とのキスが、こんなにあたしを揺さぶるなんて、今まで知らなかった。
 あぁ、どうしよう。すっごく嬉しい、寛があたしを好きだなんて、そんな事絶対ないって思ってたのに。
 再び、寛の唇が舞い降りてきた。
 焦らない、激しくない……穏やかなキス。
「これでセカンドキスも、俺がもらった」
 彰子は息を思い切り吸い、震える瞼を開けた。
 
 目の前には、真剣に見つめる寛の顔があった。
「こうして、ずっと抱きしめたかった。辛かったよ、彰子」
 寛は、彰子を胸に引き寄せると、ギュッと抱きしめた。
 その抱きしめ方は、最初の優しかった態度とはまったく別だった。
 まるで、所有欲が突然芽生えたような、激しい抱擁だった。
「牢獄だった。窓越しでしか、お前を見られないし……俺とは目も合わそうとしてくれなかった」
「だって、それは」
「それは?」
 彰子は言おうか言うまいか悩んだが、寛の真摯な瞳を覗き込んでしまい、勇気を出した。
 今言わなくて、いつ言うの? 正直に気持ちをつたえなくちゃ、あたしの本当の気持ちを。
 大きく息を吸い込むと、ぴったりと寛の目を見つめた。
「……寛の事が好きだから、だから見れなかったの」
 彰子の腰を掴む手が、ギュッと強まった。
「本当に? 本当に、俺の事……好きだった?」
 耳元で、寛の掠れた声がした途端、彰子は躰が蕩けそうになり、寛の腰を掴んだ。
「うん」
「嬉しいよ、すっげぇ嬉しい!」
 高鳴る鼓動が、寛の鼓動と重なった。
 二つの鼓動が、共に同じ早さで打つのを聞いた彰子は、離れていた魂が、やっと出会えた……やっと一緒になれたと喜んでるみたいに思えて仕方なかった。
 
 
 彰子は、溢れ出る気持ちを無理に抑えて、気になった出来事を思い出し、ゆっくり口を開いた。
「ねぇ、さっき木嶋さんに何言われてたの?」
「えっ?」
 寛は、腕を緩めると、彰子を見下ろした。
「下で、耳打ちされてたじゃない。あれ、何って言ってたの?」
 そう言うと、寛は急に顔を赤くして、視線を彰子の豊かな胸に移した。
「聞きたい?」
寛のその視線が妙な感じがして、聞くのをやめようかと思ったが、でも木嶋が何を言ったのか知りたかった。
「うん、言って」
 寛は大きく深呼吸すると、ゆっくり彰子の目を覗き込んだ。
「お前の……胸がすっげー柔らかいから、俺にもその感触を味わってみろって」
 それを聞いて、彰子は唖然としたが、一変して急にムカムカしてきた。
 
 あんのヤロー、木嶋の奴! どさくさにまぎれて、十分堪能してたんだ。前言撤回、木嶋の事を見直したあたしがバカだったよ!
 もう〜、彼女に見捨てられてしまえっ!

2003/05/17
  

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