4万HIT記念企画♪
あたしは、あの時の寛の行動を見て……寛に彼女がいた事を知るべきだった。
どうして、そう思わなかったんだろう?
あんな風にあたしを宥め、キスさえ慣れていたのに。
慣れているという事は、以前そういう関係の女性がいたって事だ。
そう、つまり……彼女がいた。
それはいい、許せる。
彼女が一人や二人いて当たり前だ……あのとおりの人気ものだったんだから。
確かに、あたしは寛に付き合おうとか言われたわけじゃなかったけど、あたしは付き合ってるって思ってた。
あの日以来、いつの間にか一緒にいる事が多くなり、デートも何度もするようになったんだから。
でしょう? そういう付き合いをしていたら、二人は付き合ってるって思うのも当然の事だよ。
そして、そう思わせる出来事だって、あったんだから。
彰子は、あれは夢ではない……現実に起きた事だと証明する為に、首にある証拠の品を強く握った。
* * * * *
彰子は中3になり、寛は高3になった。
二人とも受験シーズンに突入したのだ。
そんなある日。
「彰子、お前1泊って出来る?」
その言葉の意味を理解すると同時に、胸が急に高鳴った。
「……うん」
「じゃぁ、4月の連休空けといて」
「……わかった」
彰子は、とうとうお誘いがきたのだとわかった。
付き合い初めて、早半年……今まではキスや触れ合ったりするだけだったが、最後までいった事はなかった。
とうとう……あたし、寛のモノになるんだ。
そう思った瞬間、躰が熱くなった。
日々強くなる欲望……その全てが、寛によって解放されるかと思うと、躰が疼いてくる。
寛が連れて行ってくれたのは、何とTDLだった。
「どうして?」
「俺ら、受験生だろ? もうそんなに遊べなくなるから、今のうちに遊んでおきたいなぁ〜と思ってさ」
その言葉に、彰子は何の疑いも抱かなかった。
そこまで考えてくれる事が、とても嬉しかったのだ。
二人は思う存分アトラクションを制覇し、思い切り楽しんだ。
光の洪水のパレードを見た後、ベンチに座って寄り添いながら花火を眺めた。
愛おしそうにしっかり肩を抱く寛に、彰子はうっとりと凭れていた。
最高のシチュエーション……、こんな素敵な日の締めくくりに、二人で泊まるのかと思うと、嬉しくて胸が踊り始めた。
「さっ、行こうか」
促されて、彰子が立ち上がると、寛が手を差し出した。
彰子は、ガラにもなく頬を染め、その大きな手に自分の手を滑り込ませた。
寛とそんなに身長変わらないのに……あたしの手はすっぽりと寛の手に包み込まれてる。
男と女の違いを、改めて実感せずにはいられなかった。
寛が連れてきたホテルを見て、彰子は驚いてしまった。
寛は、オフィシャルホテルを予約していたのだ。
「ねぇ、あたし別に何処のホテルでも良かったのに」
「いいんだよ。俺ら二人にとって初めての泊まりだし……そんな事は彰子が悩まなくてもいいんだよ」
部屋に入ると、別々にお風呂に入った。
緊張してしまってる彰子に対し、寛は悠然と構えてる。
「寛、あたし……初めてなんだ」
落ち着かない彰子は、とうとう寛に打ち明けた。
「わかってるよ。お前のファーストキスも、俺がもらっただろ?」
安心させるように笑う寛に、彰子は胸が熱くなってきた。
自分を偽らなくてもいい、完全にあたしをわかってくれている。
その事だけで、彰子の緊張は、全て取り除かれた。
甘いキスと愛撫で、寛は彰子の女を全て引き出した。
優しく触れ、それでいて全て手に入れようと飽く事なく求めてくる。
バージンだった彰子は、何もかも寛に与えた。
寛は、与えられるモノだけでなく、彰子の全てを奪うように手に入れた。
そう、彰子の心と躰は、寛のモノになったのだ……。
「彰子……痛かった?」
優しく髪を撫でる寛に、彰子は微笑んだ。
「すごく」
彰子はそう答えたが、痛さよりも寛の態度に心打たれていた。
優しく抱きしめながらも、彰子を決して離さない態度を示した事を。
「お前にあげたいものがあるんだ」
寛は、サイドテーブルの引き出しから、一つの箱を取り出すと、彰子に渡した。
空っぽの引き出しなのに、いつの間に私物を入れたんだろう?
「何?」
「開けてみて」
二人でヘッドボードに凭れながら、彰子はその包みを開けた。
出てきたのは、プラチナの指輪だった。
彰子の胸は、急激に高鳴った。
嘘……。
呆然とする彰子に、寛は指輪を取ると、左手の薬指に填めた。
それは、すっきりと伸びる彰子の指に、ぴったりと重なった。
「今日、お前の大切なものを俺が貰ったから……俺も記念になるような、いつでも今日の日を忘れないような贈り物をしたかったんだ」
「寛……」
彰子は感激で目頭が熱くなった。
普段あまり緩まない涙腺が、寛のせいで溢れそうになった。
「嬉しい……嬉しいよ」
彰子は、その指輪に見入った。
寛は、あたしの事を大切にしてくれる……、こんなにあたしを想ってくれてるんだ。
「大切にする」
彰子は震える声で言いながら、隣で見つめる寛に微笑んだ。
寛も、喜ぶ彰子を見て、嬉しそうに笑った。
* * * * *
あたしは、この指輪が愛の証だと思っていた。
だから、寛が予備校に通い出したり、勉強で忙しくなっても、あたしは構わなかった。
寛からもらった指輪があるんだから……って。