「もう、ベッドへ行く?」
口づけを交わしながら、叶都が訊いてくる。本当の気持ちを伝えるならうん≠ニ答えたかった。
だが、叶都のセーターをギュッと握り締めて、乃愛は小さく頭を振る。
理由はわからない。ベッドへ行ってセックスになだれ込む前に、ソファでいちゃいちゃしたかっただけなのかもしれない。
とにかく今はまだ、叶都のベッドに行きたくはなかった。
「じゃ、行く前に……乃愛をいっぱい悦ばせてやるよ」
叶都の一言一言が、乃愛を刺激してくる。呼応するように、一瞬でぞくぞくとした甘い電流が背筋を突き抜けていく。
いつの間にか、心の中でめちゃくちゃに悦ばせて!≠ニ叫んでる自分がいた。
ああ、わたし……本当にえっちだよ――そうわかっていても、セックスへの探求心を止めることは無理だった。
破瓜の痛みは確かにあったけど、その前にこの身を蕩けさせたあの甘美な世界をもう一度体験したい。
叶都がセーターの下に手を滑り込ませ、ブラジャーの上から乳房を包み込む。その動きを感じながら、乃愛は甘い吐息をつき、ゆっくりソファの背に凭れた。
乳房を揉みしだきながら、叶都は乃愛の首筋に顔を寄せ、チュッチュッとキスの雨を降らしていく。
それが少しくすぐったい。
でも、そうされるたびに下腹部奥がむずむずしだし、膝同士を擦り合わせたくなってきた。
そんな乃愛の反応を知ってか、セーターの裾を持って乳房の上まで引っ張り上げた。
伸縮性のあるセーターのお蔭で、ズレ落ちるようなことはない。
「今日は……フロントホックなんだ? これも、俺のため?」
ここで嘘をついても仕方ない。乃愛は、ゆっくり頷いた。
「俺、フロントホック好きなんだ。プレゼントを開ける喜びに似ててさ」
ニコッと微笑む叶都。それを見ながら、乃愛は複雑な心境だった。
……年上の家庭教師がそうだったんだ。
叶都の過去を気にしても仕方がないことはわかっているのに、乃愛は考えずにはいられなかった。嫉妬を覚えてしまいそうにもなる。
でも、目を輝かせてブラジャーから零れそうな乳房に見蕩れる彼を見ていると、そんな気持ちを抱く必要はないように思えた。
今は、乃愛だけを愛してくれてるから。永遠に≠ニ誓って、リングをプレゼントしてくれたのだから……
叶都が手慣れた仕草で、フロントホックを外す。張り詰めた糸が切れたように、抑制をなくしたブラジャーから熟れた果実が現れた。
セーターの裾で軽く押されてるせいで、乳首に血が集まりぷっくりと膨らんでいる。
「ヤバッ。俺……冷静でいられないかも」
叶都は片方の乳房を下から掬い上げ、その重みに感嘆の吐息をつく。優しく揉みしだきながら指を出し、乳首を捏ねくり回し始めた。
ボタンを押すように押し込んだかと思えば、周囲を撫でる。
「っぁ、あっ……っんん」
肌にかかる叶都の熱い吐息。夢中になっている叶都の姿を見るだけで、どんどん気持ちが昂ぶってくるのがわかった。
叶都が乳首を口に含む。ねっとりとした感触、小刻みに舌を動かして振動を与えられると、乃愛の喘ぎはだんだん止まらなくなってきた。
しっとりと湿り気を帯びていたパンティが、さらに愛液で濡れていく。
足をもぞもぞと動かしていると、叶都の手が大腿を撫で上げた。足の付け根まで忍び寄り、叶都しか触れさせたことがない秘部を指で摩る。
「あっ、んんっ……ぁん!」
「すごいびしょ濡れ……。もっと濡れる前に脱ぐ?」
乃愛の乳首を解放しながら、叶都は上目遣いで問いかけてくる。乃愛は、恥ずかしそうにコクリと頷いた。
「じゃ、立って」
ソファに手を置き、乃愛はゆっくり立ち上がった。足が戦慄くものの、何とか耐えられそうだった。
叶都の手がスカートの中に伸び、パンティをゆっくり脱がし始める。
彼の目に晒しているのは、乳房だけ。なのに、覆いが1枚なくなっただけで、素っ裸になった気分になった。
足を抜くように促されてて、ゆっくりと足を上げた。脱がした乃愛のパンティはソファに置き、叶都は再び乃愛を座るように肩を押す。
「……マジ、そそられる」
乃愛の隣に腰を下ろすと、叶都は乃愛の膝の裏に手を入れて、片足をソファに載せるように促した。
ミニスカートが捲れ、秘部が明るい元に晒される。
叶都に見られる!
そんな乃愛の反応を見逃さないよう、叶都はジッと彼女を見つめていた。そして乃愛の大腿に手を滑らせて、秘めやかな茂みを探り始めた。
「ひゃぁ!」
乃愛は軽く俯いて、ギュッと瞼を閉じた。叶都の指が濡れた割れ目に沿って動き始めると、ビクッと躯が跳ね上がる。
勝手に秘部が戦慄くのを待っているのか、心を開かせるようにゆっくりと撫でては何度も何度も擦り上げる。
「俺の指、かなり滑ってるのがわかる?」
「……うん」
溢れる愛液が、叶都が動かす指に刺激され、秘部からどんどん愛液が溢れていく。くちゅくちゅと淫猥な音が部屋に響き、それに合わせて乃愛の喘ぎも大きくなった。
喘ぎ声を抑えようと、甲で口を押さえるものの、もう躯が歓喜に震えていてどうにもならない。
片手をソファに置き、ゆっくりソファに凭れる。それを見た叶都は、乃愛の乳房に顔を寄せ、舌を出して乳首をペロペロと舐め始めた。
「やぁ……っんん!」
躯が小刻みに震え、甘い電流が躯を駆け巡っていく。
この悦びを味わいたかったにもかかわらず、これだけでは物足りなさも徐々に感じていた。
もっと、さらにもっと高みへ飛翔できるような快楽が欲しい。
それはきっと、一度弾けるような快感を体験したから……
叶都自身を迎え入れるのは、まだ恐怖を感じていた。またあの痛みがするのではないかと。
でも、乃愛は叶都が悦に包まれてうっとりとする表情も見たかった。乃愛の膣内に入るだけで、至福を浮かべるあの表情を。
叶都とベッドに行くのはせめてあと一時間後ぐらい……と、思っていたのに。
「挿入するよ」
「あっ!」
叶都の指が、乃愛の膣内に滑り込む。膣壁を摩ったかと思えば圧迫がなくなり、再び膣奥まで侵入した。
リズムに合わせてくちゅくちゅとなる音。乃愛の乳首を交互に口と舌で愛撫する叶都。躯を襲ってくる快楽に、乃愛は溺れてしまいそうだった。
自然と漏れる喘ぎも、止めるどころかだんだん大きくなってくる。
「叶都……っんん、あっ……はぅ」
ここまで翻弄されなければ、きっと自分でもセーブできたと思う。
しかし、それ以上を求める乃愛に、自制する力はなくなっていた。
もっと弄って欲しいとせがむように膝を立てていた足が、どんどん大きく外へ開いていく。
「乃愛……俺、もう我慢できないんだけど。入っていい? 乃愛の温かい膣内に入って包まれたい。ガンガン腰振って、乃愛を喘がせたい」
「うん……、きて」
ここまできたら拒むことはできない。乃愛の方が叶都を求めていて、硬くなった彼自身を感じたかった。
愛撫の手を止めると、叶都は立ち上がった。乃愛の正面でベルトのバックルを急いで外す。盛り上がった股間を見て、乃愛は嬉しくなった。
乃愛のせいで……叶都はこんなにも興奮してくれてる。
それがどんなに嬉しいか、叶都はわからないだろう。乃愛は、いつの間にか叶都にのめり込むほど愛するようになっていたから。
ジーンズのボタンを外し、ファスナーを下ろしたまさにその時だった。
――コンコンコンッ。
ドアをノックする音が部屋に響く。
『叶都? もう、ジュースがなくなったんじゃない?』
お、おばさま!?――思わず、叶都と視線を交わす。
『叶都?』
ドアのレバーを何回も押す音が聞こえる。
舌打ちをした叶都が「うるさい!」と大声出しながら、ファスナーを上げる。
それを見て、乃愛は足をソファから下ろし、捲りあがったセーターを腰まで引っ張った。
フロントホックをつける時間はなく、乃愛はブラジャーを背中に回すようにする。
薄手のセーターだから、勃っている乳首が生地を押し上げているのがわかった。だが、それをどうにかすることはもう無理だった。
乃愛は急いで髪を前に垂らしして、乳房の上に乗るようにした。
その時、叶都がドアの鍵を開けた。
叶都を押し寄せるようにして彼の母が室内に入ってくると、乃愛はソファから立ち上がった。そんな乃愛に目も暮れず、彼女の目は真っ先にベッドへ向かう。
やっぱり疑っていたのだろう。乃愛が叶都のバスルームから出たのを見たあの日から。
そう思った瞬間、白いものが目の端に飛び込んだ。
あっ、パンティ!
これを見られてしまったら、乃愛がノーパンだと気付かれてしまう。そして、今何をしていたのかも……