EXCESS STORY
莉世は、助手席に座りながら、何度も何度も頭の中に入ってくる、二人のバスルームでのシーンを追い払っていた。
あぁ、恥ずかしいよ!
一貴がお願いしても、絶対バックでえっちしないんだから! もうイヤ、あんな恥ずかしい姿。まるで……一貴、野獣みたいだったよ。
莉世は、恥ずかしさから俯き、鞄をきつく握った。
どうしてバスルームでわたしを抱いたの? 何か、原因が?
莉世は、改めてその時の事を思い出し始めた。
いきなり後ろから抱きつかれて、わたし戸惑ったんだ。
遊んでたから汗かいてたし、古賀君の感触もあったから、シャワーに行かせて欲しいって言って、すぐに鞄を置いてバスルームに入ったんだよね?
……鞄? ……ああぁぁぁ〜!
そうだった。あの鞄の中には、皆で買ったあの写真があったんだ。
もしかして、見たの?
二人が抱き合うように寄り添ってる、あの写真を?
莉世は、恐る恐るチラリと一貴の横顔を見たが、無表情で運転している。
あぁ、駄目! 「もしかして、写真見た?」なんて、絶対聞けないよ!
もし、見たって言われたら……何て答えたらいいかわからないし……ううん、そういう時は正直に言えばいい。
だけど、もうこのまま忘れたフリする方が無難かも。
もし、一貴があの写真を見て……バスルームに乗り込んできたのなら、あの時の野獣のような行動が頷ける。
いきなり入ってきて、わたしをそこで抱くぐらい……怒ってたって事だもの。
チラリと一貴を見る。
一貴、あの写真を見て嫉妬したんだ……。
だから、いきなりバスルームに入ってきて、まるで動物のような体位で、わたしを求めたんだ。
莉世の頬が自然と緩んだ。
嬉しいな……それって、わたしを愛してるって事だもの。
莉世は、飛び上がる程嬉しい感情に、甘いため息を漏らした。
でも!
莉世は、背筋をピンと伸ばした。
もし、これからも一貴がバックで迫ってくるような事があっても、絶対させてあげないんだから。
いくらお願いされても、絶対させてあげない。
もう、本当に嫌だったんだから……恥ずかしかったんだから!
莉世は、桐谷家へ向かって急いで運転する一貴を見ながら、密かに誓いを立てていた。
二度と、あんな体位でえっちさせてあげないからね!