「っんん!」
一貴は、莉世を膝に跨がらせながら、思い切り抱きしめ、唇を奪った。
無理やり唇を割ると、舌を滑るように進入させ、莉世の舌に絡ませる。
莉世もそれに応え、激しくキスを返す……その行為はまるで戦ってるかのようだった。
でも、いつもいつもわたしが負けてしまう。
一貴の攻撃に、わたしはいつも堪えられなくなってしまう。
莉世は、溢れ出そうな唾液に苦しくなりながらも、一貴の熱い舌を口内で感じていた。
「莉世……」
一貴の手が、莉世の躰を探索をし始めた。
わき腹を上下に撫でられ、莉世は躰をビクッと奮わせた。
喘ぎは、一貴の唇で全て飲み込まれてしまう。
あぁ……わたしもそうだけど、一貴もわたしに会えなくて寂しかったって思ってくれてるの? だから、こんなにわたしを求めてくるの?
G.W.……今年の連休は少なく、一貴は前半会社に出勤していた。
後半、莉世は一貴と過ごす日々を心待ちにしていたが、何とパパが急に家族旅行を計画。
拒絶した莉世の意見は、見事3対1で破棄されてしまった。
ただ、最終日の5日だけは空ける事が出来、こうして一貴を訪ねて来たのだ。
ところが、一貴の部屋に入って目が合った瞬間、一貴の目と躰から発散される……欲望が混じった情熱を垣間見てしまい、こうして一貴の手に搦め取られて……イチャイチャと戯れる事になってしまったのだ。
一貴は、ブラウスの上から乳房を優しく包み込んだ。
「ぁん……」
莉世は思わずのけ反った。
それを見逃す一貴ではない。
露な白い肌に、一貴は顔を埋めた。
「……いい香いだ」
そんな事言わないで。
莉世は恥ずかしさから、瞼をギュッと閉じた。
だからといって、一貴から逃れられるわけがない。
それを実証するように、一貴の舌が、鎖骨を撫でる。
「はぁぅ」
莉世は、一貴の白いカッターシャツのウエスト部分をきつく握り締めた。
一貴は、顔を上げると、莉世のボタンを上から順番に外し始めた。
ええっ?
嘘……一貴、今する気? だって、まだ昼の1時なんだよ!
「ねぇ、一貴」
莉世は、焦りながら声を振り絞った。
「何だ?」
一貴は、ボタンを外すことに夢中で、こちらを見ようとさえしない。
全てボタンを外すと、ゆっくり前を開き、ブラから零れそうな乳房を満足げに見つめた。
それを見た瞬間、心臓がドキンと高鳴った。
抑えようとするのに、激しく上下する胸を止められない。
「ま、だ……お昼だよ?」
「それで?」
一貴は、カップを押し下げ、乳房を露にさせた。
あぁ……、やだやだ、こんなまだ明るいのに!
「お前……胸大きくなってないか?」
突然言われて、莉世は唖然としながらも、顔を赤く染めた。
な、何で……わかるの?
まだ、カップをワンサイズ上げるまではいってない。
しかし、以前に比べると、確かに大きくなってはいる。
特に、生理前の今は……。
一貴は、柔らかい乳房を掌に埋めるように揉んだ。
「あっ!」
莉世は顔を顰めて、一貴の手から身を離した。
「どうかしたか?」
いつもと違う莉世の態度に、やっと一貴は顔を上げた。
「わたし……今、敏感になってるの」
恥ずかしそうに、莉世は言った。
「敏感?」
あぁ~、もう、どうしてわかってくれないの?
「……今日は5日だよ? 決まってるじゃない……もうすぐ生理が始まるから、胸が張ってて」
これで許してくれると思った。
生理前だと知れば、労ってくれるのではないかと。
しかし、それは間違いだった。
「ちょ、ちょっと!」
一貴は、急に莉世の胸に舌を這わせた。
「忘れてたよ……。忘れたら駄目なのにな。お前の周期は、俺が把握してるべきなのに」
なら、やめようよ!
そうココロで叫んでも、一貴の舌が齎す快感が……躰を奮わせる。
莉世は、一貴の肩を押して身を捩ろうと思ったが、腰を抱く一貴の手はビクともしない。
「やだ、やだぁ」
「1週間待ったんだぞ? さらに生理が来て、また1週間。 俺の身にもなってみろ」
そんな事言ったって、どうしようもないじゃない。
旅行なんか行きたくなかったけど、パパが勝手に決めちゃったんだから。
それに、生理だって、これは女性の宿命だよ。
「そうだ! ねぇ、わたしが一貴の為に買ってきたお土産、そこに置きっぱなしだよ? それ、見てよ。一緒に食べよう?」
「お土産? お前が無事に帰ってきてくれた……それが俺への土産だよ。だからこうやって、包みを開けて、味わおうとしてるんだろ? それに、お前も一緒に食べれる、だろ?」
一貴は、敏感な乳首を舌で舐めた。
「あぁっ……」
躰の芯に、甘い電流が走った。
わたしが言った言葉を、どうしていつもこう脚色するんだろう。
だが、一貴の切羽詰まった欲望が、限界にきているとわかると、莉世はとうとう覚悟を決めた。
こんな朝っぱらからえっちなんてしたくないけど、わたしも一貴に会いたくて、触れたくて仕方なかった……。
一貴が点けた火が、わたしの中でどんどん燃え上がってくる……だから、わたし。
莉世は全てを捧げるように、一貴の首に抱きつこうとした。
――― ピンポーン
エントランスのチャイムだ。
上げていた手を下ろし、一貴の肩を叩いた。
「誰か来た、よ?」
「放っておけ」
「でも、」
「くだらないセールスさ」
一貴は顔を上げると、莉世の口を塞いだ。
やはりそのキスは、飢えてるキスだった。
「ここでするか? それともベッドルームでするか?」
そんなの、決まってるじゃない。こんなとこでしたくない。
訴えるような顔をする莉世に、一貴は笑いながら軽く頬にキスした。
「わかったよ」
この後に必ず訪れる快感に身を奮わせた時、いきなり玄関から声が響いてきた。
「お~い、誰もいないのか?」
その低い男の声を聞いて、一貴は驚愕した。
すぐさま莉世をソファに下ろすと、勢いよく立ち上がった。
「莉世、早く服を整えるんだ!」
舌打ちしながら、不機嫌そうな声で言うと、一貴は莉世をその場に残して、急いで玄関に向かった。
莉世は突然の誰かの登場で、助かったのか……邪魔が入ったのかわからなくなった。
とりあえず、早く衣服を整える事が先。
しかし、手が震えて思うようにいかない。
カップに乳房を入れて、ボタンをかけていく。あと最後の2つ!
「誰を隠してるんだよ」
「こら! 勝手に開けるな!」
二人の交錯する声がダイニングに響いた。
莉世はビクッと躰を伸ばすが、手元は止まってしまった。
え~と、え~と……わたしはどうしたらいいんだろう?
一貴の友達と会うなんて、小学生以来だよ?
それに、わたしはどういう立場で挨拶すればいいんだろう?
あぁ、それよりわたしはどうしたらいいの?
莉世は覚悟を決めて、ゆっくり振り返った。
一貴の脱力した顔に、興味津々の顔をしたもう一つの顔。
あれ? わたし、どっかで見た事があるような気がするんだけど……誰?
「もしかして……教え子? 何だよ、女子高生なんか興味ない、絶対手出さないって言っておきながら、家まで引っ張り込んでるじゃないか」
ニヤニヤしながら、その男性は一貴のわき腹を小突いた。
「誰が教え子に手を出すんだ。バカか、お前」
本当に苛立った様子の一貴は、その男性を思い切り睨む。
ええっと……その不機嫌さは、もしかして出来なかった、せい、もあるのかな?
莉世は、苦笑いしながら、一貴の隣の男性を観察した。
一貴より、ほんの少し背は低いように見えるが、引き締まった躰にハンサムな容貌は、一貴に負けてはいない。
二人が並ぶと……そう、まるで芸能人のような存在感がある。
もし二人揃って外を歩いていたら、必ず女性の目を惹くだろう。
思春期の女の子から、成熟した大人の女性まで。
その事実が、莉世の胸に鋭い痛みを齎した。
わたし、欲張りだ……。誰にも一貴を見られたくないって思ってる。
普通に生活していたら、そんな事は無理だってわかってるのに。
一緒にデートしてる時、わたしと全く違うタイプの……とても綺麗で聡明な美人女性が、すれ違いざまに一貴に色目を使う。
一貴は、わたしと一緒にいる時は……そういう女性に見向きもしないけど、絶対見られてるってわかってる。
そういう時……わたしは大声で叫びたくなる。わたしの一貴を見ないで! って。
あぁ……こんな子供染みた嫉妬や独占欲、いつもやめなきゃって思うのに、わたし……なかなか抜け出せない。
やっぱり、わたしはまだまだ子供なんだ。
早く、一貴に似合う女性になりたい……。
誰が見てもお似合いだねって言われるような、女性に成長したい。
何より、一貴が堂々と紹介出来るような、素晴らしい女性に早くなりたい……。
物思いにふけりながら、その男を見つめていた莉世は、一貴も莉世を観察するように見つめていたとは、全く気付かなかった……