番外編

『Love affair?』【2】

「授業をサボった理由を教えてもらおうか?」
 
 莉世は、英語科専用室の部屋にいた。
 一貴は、散らかったノートを片手で抱えると、莉世の手を引っ張ってココへ連れてきたのだ。
 他の先生方は、授業に出ていて誰もいない。
 この部屋にいるのは、一貴とわたしだけ。
 
 回転椅子にふん反り返る一貴の前で、莉世はピクリとも動かずに佇んでいた。
 
 
「莉世?」
 そう問われて、思わず顔を横に向ける。
「……どうして、わたしがあそこにいるって知ったの?」
 唇が勝手に戦慄く。
 まだ気持ちが不安定なのに、どうして一貴と向き合うハメになったのだろう?
 莉世は思わず瞼を閉じ、感情を隠した。
 しかし、そんな莉世を放っておく一貴ではない。
 莉世の表情から全て探り出そうとするように、目を細めて凝視する。
「……三崎だ。“何かがあって、お前が授業をサボると言ってる”……と携帯にかかってきたんだ。ちょうど空きだったから、お前を探したんだ」
 思わず、莉世の眉間に皺ができた。
 そういえば、古賀くん彰子に言うって言ってた。言わなくても、彰子なら絶対聞き出そうとするけど、まさか一貴に連絡するなんて。
「それで、どうしてサボった?」
 戒めるような強い言い方ではなく、優しく囁きかけるその声に、莉世は自然と視線を一貴に合わせた。
 一貴の心理を訊こうと口を開きかけるが、感情が昂ぶっていた為、涙が込み上げてくるのを止められなかった。
「泣くな、莉世」
 一貴は、莉世のヒップを掴むと抱き寄せた。
 その仕草は、小さい頃……莉世が泣き始めると、優しく抱きしめてくれた時と同じだった。
 わたし、もう子供じゃない。だからこそ、めそめそ泣きたくない……。
 でも、一貴の温もりを拒絶する程、わたしは強くはない。
 
 
 莉世は涙を追い払うように、おもむろに瞼をギュッと瞑った。
 そして、ゆっくり瞼を上げて一貴を見下ろす。
「……えっちするの? 長谷川さんと」
 擦れた声が、部屋に響く。
 一貴の目が急に細められた。
 その表情から何も読み取る事が出来ない莉世は、焦りを感じた。
 もしかしたら……わたしに知られたくなかったとか?
「一貴は“俺でいいのか?”って言った。長谷川さんの方から告白してるんだよ? 普通はそう訊き返されると、告白した本人からは絶対拒絶なんてしない」
 再び涙が込み上げてきた。
 イヤよ、一貴が他の女性に目を向けるなんて、絶対イヤ!
「お願い、わたしで我慢して? 他の人を抱いたりしないで……お願い、一貴。わたし、何でもするから」
 莉世はいつの間にか強く拳を作ると、縋り付くように一貴を見下ろして言った。
「それが理由で、授業をサボったのか?」
 莉世は、唇を噛み締めた。
 それが事実だったからだ。授業に出ても、絶対考えてしまうとわかっていたから。
 
 
 しばらく、どちらも動かなかった……言葉すら発しなかった。
 しかし、その静寂は突然破られる事になった。
 一貴が手を滑らすと、そのままスカートの中へ進入してきたのだ。
 その行為に、莉世は思わず躰を強ばらし一貴を見下ろした。
「か、一貴! な、何するの」
「“何でもする”って言っただろ?」
 確かに言った……けど、どうして今なの? 授業中にこんな事するの?!
 一貴は、パンティの上からヒップに両手を這わした。
 そのままゆっくり滑らすと、莉世の秘部にそっと触れた。
「っぁ」
  口から、思わず吐息が漏れる。
 一貴は、莉世の表情を伺いながら、何度も何度も丘を愛撫した。
 莉世自身、じっとりと濡れてきたのがわかる。
 皆が授業を受けているっていうのに、わたしは一貴に奏でられるまま反応してしまってる。
 だからといって、拒否も出来なかった。
 一貴は、莉世の全てのツボを知りつくしているから……。
「一貴、ダメ、濡れちゃうから」
 拒否とも……肯定とも取れる言葉が、口から漏れる。
「そうだな」
 一貴の指が離れた瞬間、莉世はホッとしながらも……満たされぬ思いも抱えてしまった。
 一貴は、それさえもよくわかっていたのだろう。
 指をパンティの端に引っかけると、一気に下げた。
「ほら、足を抜いて」
 莉世は拒絶も出来ないまま、頬を赤らめてゆっくり足を抜いた。
 スカートの下がスースーする。
 一貴は、おもむろにパンティーをデスクの上へ置いた。
 そして、再び触れてきた。
 一貴の肩に両手を置いて、強く握り締めた。
 躰が反応し、ビクッと奮えるのと……声を出来るだけ漏らさないようにする為だった。
「すごい濡れてる」
 当然だよ、一貴が指でわたしを翻弄させるんだから。
 一貴はその潤いを確かめた上で、指を挿入した。
「っあ!」
 少し痛かった。
 多分一貴もそれがわかったのだろう。
 片足を抱えると、側にあった小さな椅子に足をのせた。
「これで大丈夫だろう」
 そして再び、指の挿入をする。
「い、やぁ」
 一貴の愛撫が、躰中を快感へと齎す。
 いつの間にかのけ反り、喘いでいた。
 早くこの苦痛を解放して…そう思った時、突然一貴が指を抜いた。
 えっ? どうして? 
 潤んだ目で見下ろすと、一貴はドアの方に神経を集中させている。
 ま、まさか、誰かが?!
 
 
  一貴は莉世を抱き上げると、窓際のロッカーに莉世を置きカーテンで隠した。
 すると、そのまま何処かへ行った。
 
 わたしったら、いったい何してるの? ここは、一貴の個室じゃないのよ? それなのに、いつ誰か来るともわからないこの部屋で、わたしは一貴の前で……。
 誰からも見えないとわかっていても、両手で顔を覆った。
 未だ満たされぬ躰は激しく奮え、鼓動の音まで聞こえてきそうだ。
 授業中にこんな事するなんて、どうかしてるよ。
 
 シャーッという音が響き、慌てて両手を下ろすと、一貴が目の前にいた。
「もう行ったぞ」
「……バレなかった?」
「ただ通り過ぎただけだ。それでバレるワケがない」
 そう言うと、膝を立ててる莉世の下半身に手を伸ばし、潤いを確かめる。
「まだ、大丈夫だな」
 大丈夫だなって……まだするつもりなの?!
 
 問う間もなく、莉世を再び抱き上げるとデスクに腰かけさせ、ズボンを緩めた。
 そこには、既に硬くなった一貴のモノがあった。
「行くぞ」
 行くぞって……ちょっと待って。一貴、何も着けてない。
「っああぁぁ」
 一貴が腰を突きだし、挿入してきた。
 その異物の感触が、膣内(なか)を収縮させる。
 莉世はのけ反りながらも、慣れたように…一貴の腰に足を絡めた。
 奥深くまで一貴を迎えると、一貴は上からのしかかり、揺すり始めた。
 その激しさから、一貴が怒ってるのが伺える。
 何故そんなに怒ってるの? 俺の女関係に口を挟むなって事を、無意識に伝えてるの?
 躰は敏感に感じながらも、ココロは張り裂けそうだった。
「ふぅ…っ……っ」
 いつの間にか、莉世は嗚咽を漏らしながら泣いていた。
 一貴も、それに気付く。
「どうした? 何故泣く?」
 荒い息をしながら擦れた声で口元に囁く一貴に、思い切り首に抱きつくとキスをした。
 この部屋に入ってからの……初めてのキス。
 イヤ、一貴を誰ともわかち合いたくない。わたしだけを愛して欲しい、わたしだけを求めて欲しい。これって、ワガママじゃないよね? だって、一貴はわたしの彼氏なんだから。
 ココロの奥で問いかけながら、莉世は一貴にしっかり抱きついた。
 
 一貴は慰めるように唇を愛撫し始め、そして優しく円を描くような突きを繰り返した。
 その優しさが、どれだけわたしを甘美の世界へ誘ったか……一貴はきっとわからないだろう。
 思い切り奥まで迎え入れた瞬間、莉世はビクッと後ろにのけ反った。
「…っぁああぁ!」
 頭にあたった本が、次々と下へ落ちて音をたてるが……莉世は全く気付かなかった。

2005/06/09
  

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