番外編
「授業をサボった理由を教えてもらおうか?」
莉世は、英語科専用室の部屋にいた。
一貴は、散らかったノートを片手で抱えると、莉世の手を引っ張ってココへ連れてきたのだ。
他の先生方は、授業に出ていて誰もいない。
この部屋にいるのは、一貴とわたしだけ。
回転椅子にふん反り返る一貴の前で、莉世はピクリとも動かずに佇んでいた。
「莉世?」
そう問われて、思わず顔を横に向ける。
「……どうして、わたしがあそこにいるって知ったの?」
唇が勝手に戦慄く。
まだ気持ちが不安定なのに、どうして一貴と向き合うハメになったのだろう?
莉世は思わず瞼を閉じ、感情を隠した。
しかし、そんな莉世を放っておく一貴ではない。
莉世の表情から全て探り出そうとするように、目を細めて凝視する。
「……三崎だ。“何かがあって、お前が授業をサボると言ってる”……と携帯にかかってきたんだ。ちょうど空きだったから、お前を探したんだ」
思わず、莉世の眉間に皺ができた。
そういえば、古賀くん彰子に言うって言ってた。言わなくても、彰子なら絶対聞き出そうとするけど、まさか一貴に連絡するなんて。
「それで、どうしてサボった?」
戒めるような強い言い方ではなく、優しく囁きかけるその声に、莉世は自然と視線を一貴に合わせた。
一貴の心理を訊こうと口を開きかけるが、感情が昂ぶっていた為、涙が込み上げてくるのを止められなかった。
「泣くな、莉世」
一貴は、莉世のヒップを掴むと抱き寄せた。
その仕草は、小さい頃……莉世が泣き始めると、優しく抱きしめてくれた時と同じだった。
わたし、もう子供じゃない。だからこそ、めそめそ泣きたくない……。
でも、一貴の温もりを拒絶する程、わたしは強くはない。
莉世は涙を追い払うように、おもむろに瞼をギュッと瞑った。
そして、ゆっくり瞼を上げて一貴を見下ろす。
「……えっちするの? 長谷川さんと」
擦れた声が、部屋に響く。
一貴の目が急に細められた。
その表情から何も読み取る事が出来ない莉世は、焦りを感じた。
もしかしたら……わたしに知られたくなかったとか?
「一貴は“俺でいいのか?”って言った。長谷川さんの方から告白してるんだよ? 普通はそう訊き返されると、告白した本人からは絶対拒絶なんてしない」
再び涙が込み上げてきた。
イヤよ、一貴が他の女性に目を向けるなんて、絶対イヤ!
「お願い、わたしで我慢して? 他の人を抱いたりしないで……お願い、一貴。わたし、何でもするから」
莉世はいつの間にか強く拳を作ると、縋り付くように一貴を見下ろして言った。
「それが理由で、授業をサボったのか?」
莉世は、唇を噛み締めた。
それが事実だったからだ。授業に出ても、絶対考えてしまうとわかっていたから。
しばらく、どちらも動かなかった……言葉すら発しなかった。
しかし、その静寂は突然破られる事になった。
一貴が手を滑らすと、そのままスカートの中へ進入してきたのだ。
その行為に、莉世は思わず躰を強ばらし一貴を見下ろした。
「か、一貴! な、何するの」
「“何でもする”って言っただろ?」
確かに言った……けど、どうして今なの? 授業中にこんな事するの?!
一貴は、パンティの上からヒップに両手を這わした。
そのままゆっくり滑らすと、莉世の秘部にそっと触れた。
「っぁ」
口から、思わず吐息が漏れる。
一貴は、莉世の表情を伺いながら、何度も何度も丘を愛撫した。
莉世自身、じっとりと濡れてきたのがわかる。
皆が授業を受けているっていうのに、わたしは一貴に奏でられるまま反応してしまってる。
だからといって、拒否も出来なかった。
一貴は、莉世の全てのツボを知りつくしているから……。
「一貴、ダメ、濡れちゃうから」
拒否とも……肯定とも取れる言葉が、口から漏れる。
「そうだな」
一貴の指が離れた瞬間、莉世はホッとしながらも……満たされぬ思いも抱えてしまった。
一貴は、それさえもよくわかっていたのだろう。
指をパンティの端に引っかけると、一気に下げた。
「ほら、足を抜いて」
莉世は拒絶も出来ないまま、頬を赤らめてゆっくり足を抜いた。
スカートの下がスースーする。
一貴は、おもむろにパンティーをデスクの上へ置いた。
そして、再び触れてきた。
一貴の肩に両手を置いて、強く握り締めた。
躰が反応し、ビクッと奮えるのと……声を出来るだけ漏らさないようにする為だった。
「すごい濡れてる」
当然だよ、一貴が指でわたしを翻弄させるんだから。
一貴はその潤いを確かめた上で、指を挿入した。
「っあ!」
少し痛かった。
多分一貴もそれがわかったのだろう。
片足を抱えると、側にあった小さな椅子に足をのせた。
「これで大丈夫だろう」
そして再び、指の挿入をする。
「い、やぁ」
一貴の愛撫が、躰中を快感へと齎す。
いつの間にかのけ反り、喘いでいた。
早くこの苦痛を解放して…そう思った時、突然一貴が指を抜いた。
えっ? どうして?
潤んだ目で見下ろすと、一貴はドアの方に神経を集中させている。
ま、まさか、誰かが?!
一貴は莉世を抱き上げると、窓際のロッカーに莉世を置きカーテンで隠した。
すると、そのまま何処かへ行った。
わたしったら、いったい何してるの? ここは、一貴の個室じゃないのよ? それなのに、いつ誰か来るともわからないこの部屋で、わたしは一貴の前で……。
誰からも見えないとわかっていても、両手で顔を覆った。
未だ満たされぬ躰は激しく奮え、鼓動の音まで聞こえてきそうだ。
授業中にこんな事するなんて、どうかしてるよ。
シャーッという音が響き、慌てて両手を下ろすと、一貴が目の前にいた。
「もう行ったぞ」
「……バレなかった?」
「ただ通り過ぎただけだ。それでバレるワケがない」
そう言うと、膝を立ててる莉世の下半身に手を伸ばし、潤いを確かめる。
「まだ、大丈夫だな」
大丈夫だなって……まだするつもりなの?!
問う間もなく、莉世を再び抱き上げるとデスクに腰かけさせ、ズボンを緩めた。
そこには、既に硬くなった一貴のモノがあった。
「行くぞ」
行くぞって……ちょっと待って。一貴、何も着けてない。
「っああぁぁ」
一貴が腰を突きだし、挿入してきた。
その異物の感触が、膣内(なか)を収縮させる。
莉世はのけ反りながらも、慣れたように…一貴の腰に足を絡めた。
奥深くまで一貴を迎えると、一貴は上からのしかかり、揺すり始めた。
その激しさから、一貴が怒ってるのが伺える。
何故そんなに怒ってるの? 俺の女関係に口を挟むなって事を、無意識に伝えてるの?
躰は敏感に感じながらも、ココロは張り裂けそうだった。
「ふぅ…っ……っ」
いつの間にか、莉世は嗚咽を漏らしながら泣いていた。
一貴も、それに気付く。
「どうした? 何故泣く?」
荒い息をしながら擦れた声で口元に囁く一貴に、思い切り首に抱きつくとキスをした。
この部屋に入ってからの……初めてのキス。
イヤ、一貴を誰ともわかち合いたくない。わたしだけを愛して欲しい、わたしだけを求めて欲しい。これって、ワガママじゃないよね? だって、一貴はわたしの彼氏なんだから。
ココロの奥で問いかけながら、莉世は一貴にしっかり抱きついた。
一貴は慰めるように唇を愛撫し始め、そして優しく円を描くような突きを繰り返した。
その優しさが、どれだけわたしを甘美の世界へ誘ったか……一貴はきっとわからないだろう。
思い切り奥まで迎え入れた瞬間、莉世はビクッと後ろにのけ反った。
「…っぁああぁ!」
頭にあたった本が、次々と下へ落ちて音をたてるが……莉世は全く気付かなかった。