4万HIT記念企画♪
陽光が窓から差し込む。
部屋の中央に座り込み、箱の中身を見ては考えてる親友の綺麗な髪が輝いていた。
彰子は震える躰を両腕で抱きしめ、その姿を見下ろしていた。
あたしの髪も、莉世と同じぐらいの長さだった。
寛が髪に触れてくる仕草が大好きだったから……。
でも、二人の関係が終わった時……あたしは未練を断ち切るため、ばっさりとショートにした。
今では、この髪型はとても気に入ってる。
新しい自分に生まれ変わったみたいだから。
でも、全然生まれ変わってなんかいない……あたしの心の中には、未だこんなにも寛が住みついている。
彼女は帰国子女で、まだ知り合って3ヶ月少し。
その彼女が、我らの担任と付き合ってると知ったのが、2ヶ月前。
何という巡り合わせ……。
二人が幼なじみだったと知った時は、すごいビックリした。
だけど……こうして今その二人を見ていると、とても羨ましく思う。
年齢差はかなりある筈……多分10才は離れてる。なのに、莉世はセンセに愛されてる。あたしは?
あたしと寛の方が、わかり合える確率は高いのに、あたしたちはもうダメ。
それを象徴するように、彰子の目にあの箱が飛び込んできた。
彰子は目を天井に向け、涙を押し止めようとした。
恋人にもう一度なりたいなんて言ってない、ただ気持ちを全て伝えたいだけ。
なのに、どうして寛はこんな残酷な事をするんだろう?
寛は……こんな残酷な面を持っていなかったのに……。
「彰子?」
ハッと我に返った彰子は、莉世を見下ろした。
その目には強い力を含んでいるが、何故か表情は悲しそうに見える。
あぁ、あたしったら自分の事しか考えられなくて、無理やり恋人の間に立ち入った事しちゃったんだ。
「ごめん、莉世……あたし、自分の事しか考えてなかった。あんな風にセンセといるのを邪魔するべきじゃなかった」
言いながら、莉世の隣に腰を下ろす。
莉世は驚いた顔をしながら、彰子を見ていた。
「そんな! ……いいの、気にしないで。実は……ちょっと離れたかったんだ」
その言葉に、次は彰子が驚愕した。
「やっぱあたしのせい? あたしが呼び出したから?」
「違う、違う! ……わたしの問題、かな?」
寂しそうに作った表情で笑う莉世に、彰子は何ともいえない気持ちになった。
「莉世……」
「あぁダメダメ! 今日はわたしの悩みじゃなくて、彰子の為に来たんだから」
どうして莉世だとこんなにも安心してしまうんだろう? 今までだって友達はいた……何でも話せない友達が。だけど、莉世には弱みだって見せられる。どうして?
「ねぇ、これ彰子が出した手紙なんだけど……男の人ってわざわざペーパーナイフって使う?」
ペーパーナイフ? それって……封筒を切るやつ、よね?
彰子は自分が出した手紙を手に取った。
確かに、綺麗にスパッと切れてる。
寛ってどうだった? 何か封筒を開けるときどうしてた?
「……ごめん、思いつかない」
莉世は微笑むと、彰子の膝をポンポンと叩いた。
「一貴はハサミで切るし、向こうじゃ手でビリビリって破いてるのが多かったら、不思議に思ってね。あっそれと、久木さんの筆跡がわかるもの、何かある?」
筆跡?
彰子はビクッとした。
ある…、確かにある。
立ち上がると、机からあるカードを取り出した。
プラスティクケースに収められた、大切にしているカードを。
莉世はそれを受取ると、その書かれた文章を見て、彰子を真剣に見つめた。
「彰子……こんなに大事にされてるじゃない」
「だけど、これじゃわからない! これはあたしの……バージンをあげた時にもらったものだし」
* * * * * * * *
〜俺の、全ての気持ちを込めて〜
* * * * * * * *
「彰子が羨ましい……」
どうして? 莉世の方が羨ましいに決まってるのに。
「だって、わたしは一貴にカードをもらったり……」
莉世は、彰子の胸元で輝くリングを指した。
「そんな風に独占欲を示された事ない」
はぁ? 何言ってるの? それ……本気で言ってるわけ?
しかし、莉世の表情は諦めに似たように曇っている。
何? どうなってるの?
「ちょっと待って……。あたしから見たら、莉世は愛されてるよ、すっごく」
「かもね……。でも、今はどうかわからない。義務感かも……。妹のような存在だったわたしを……抱いてしまったから、あとに引けなくなってしまってるだけかも知れない」
自分の気持ちそっちのけに、莉世の言葉に聞き入ってしまった。
あぁ〜、何とんちんかんな事言ってるのよ。
あれだけ愛されてて、どうしてわからないの?
「あぁ、ごめん。こんな話するつもりじゃなかったのに」
彰子が口を開こうとすると、莉世が口を開いた。
「やっぱり……。見て彰子」
莉世に差し出されたものを見て、思わずそれを見た。
それは宛て名だった。
「見たけど?」
何がいいたいのだろう、莉世は?
「もぉ〜! ちゃんと見て。コレとコレを見比べるの」
箱についてあった宛て名と……寛からもらったカード。
彰子は、何度も何度も目を左右に動かした。
「……あっ!」
彰子が目を大きく開かせ、莉世を見た。
「そう。変でしょう?」
何という事だろう!
寛の字は、書きなぐったような流れる字なのに、この宛て名は女性らしい柔らかみがある字だ。
って事は……これを送りつけたのは寛じゃない。それじゃ、いったい誰?
彰子の目に、一枚の写真が飛び込んできた。
もしかして、この写真の女性……二宮早弥香なの?!