最終章『忘れられない蜜華』【6】

 乃愛は、激しく頭を振った。
 奥園との間に、何かあるように思ってほしくない!
「な、な、何もない! 付き合ってほしいって告白されたけど、わたしはきちんと断って……」
 目の前に叶都の目と唇があれば、平常心を保っていられるはずがない。
 しどろもどろに答える乃愛を見て、叶都が口元を綻ばせるのが見て取れた。
「どうして? ……って訊きたいが、そんな意地悪はやめておく。つまり、これが証拠だろ?」
 確認するように、もう一度ペンダントトップにしている指輪に触れてきた。
「そうよ! 叶都と別れてから、誰かと付き合おうなんて……今まで一度も思わなかったもの!」
「ああ、乃愛……」
 嬉しそうな声を上げると、叶都は顔を傾けて乃愛の唇を奪った。
「……っんん」
 そのキスを拒もうとはせず、乃愛は両腕を叶都の背に回す。以前抱きしめた時の記憶よりも、かなり胸囲が広くなっていた。
 叶都はカフェ用の制服に触れ、順番にボタンを外していく。その手際の良さは、昔と変わらないと思った途端、乃愛はキスを受けながらクスクス笑った。
「何? 何がおかしい?」
「だって、叶都ったら、いきなりカフェの制服に手を伸ばすんだもの。相変わらず……手が早いなと思って」
「一応褒められたと受け止めておく。それに、今日乃愛と再会してから、この目を引く制服を脱がせたくてたまらなかったんだ」
 そう言うなり、叶都は乃愛のブラウスを思い切り引っ張った。ボタンが弾け飛ぶとまでいかないが、その下のピンク色のブラジャーが露わになる。
「知ってたか? 乃愛が歩くたびに、そのミニスカートに男の視線が集まっていたのを」
「仕方ないじゃない! これはカフェの制服で……っぁん!」
 乃愛の大腿を撫で上げながら、叶都は露わになった鎖骨や乳房にキスの雨を降らす。
 乃愛の白い肌に、どんどん小さな赤い華が咲いていく。
 お尻から脳天に突き抜ける甘い電流に、乃愛は何度も躯を震わせた。
「叶都……わたし」
「今の乃愛はとても色っぽい。その短い髪もとても似合ってる。その白くて長い首を見ているだけで、俺がどれほどの刺激を受けていたか知ってるか? 昔の俺なら、きっとめちゃくちゃに乃愛を奪っていただろうな」
 自然とその光景が頭を過り、乃愛は陶酔をするようにゆっくり目を閉じた。
 髪をワックスで立たせて悪ぶっている昔の叶都は、乃愛の腕を掴んで後ろから抱きついてきた。
 その行動にビックリしながらも、乃愛は彼に求められるまま淫らに振る舞っていた。
 でも乃愛の前には、当時の叶都はもういない。
 ゆっくり瞼を開け、昔とは全然違う今の叶都を見つめた。
(わたしは、2年前の叶都を好きになって、その気持ちを胸に秘めてきた。だけど、今の叶都にも心を奪われている。昔とはまた違う気持ちで……目の前の叶都に恋をしている!)
 乃愛が恐れていたような怒りをぶつけてこないのは、それだけ叶都が成長して大人になったということ。
 叶都を恋しく想う気持ちが、乃愛の目に宿る。
 叶都はそこから何かを感じ取ったのだろう。乃愛を抱きしめると、テーブルの上に座らすよう促してきた。
「早いか? 今こうするのは……」
 ブラジャーの上から、乳房を包み込んできた。優しく揉みしだきながら、叶都は乃愛の反応を見逃さないように目を覗き込む。
「ううん、そんなことない……。だって、わたしも……それを望んでいるもの」
 その言葉を受けると、叶都は乃愛の背中に手を回してブラジャーのホックを外した。さらに膝に手を置いて、足を大きく開くように促してくる。
 ミニスカートは簡単に捲り上がり、ブラジャーとお揃いのパンティが露わになった。
「俺が記憶していたよりも、胸はかなり大きくなったな。だが、この乳首は……俺が何度も弄ってきたのと同じだ。ぷっくりと膨らんで、俺に見られているだけでどんどん硬くなるのも、全く変わってない」
 叶都の言葉ひとつひとつ、肌にかかる熱い吐息を感じるだけで、乃愛は期待から躯が疼くのがわかった。
 叶都がゆっくりと大腿を撫で上げて、乃愛に刺激を送ってくる。
 下腹部の奥が熱くなり、秘部が勝手に戦慄き始めた。同時に、パンティがしっとりと濡れていく。
「っぁ……、叶都!」
 高鳴る鼓動を意識すればするほど、乳房が大きく揺れる。それをジッと見つめる叶都の目が欲情で光り出すと、乃愛は我慢ができなくなってきた。
 手を後ろについて躯を支え、叶都が乃愛の躯を見るのを助けるように身を反らす。
「ああ、乃愛! 俺、我慢できそうもない」
 揺れる乳房から目を離せなくなった叶都は、顔を寄せると乳首を口に含んだ。
「ああっ……、っんんん!」
 叶都の舌が、硬くなった乳首を舐める。舌を硬くさせて突いたかと思えば、舌全体を使って乳首を包み込むように動かし、さらには、パンティの上から秘部への愛撫も加えてきた。
 手で躯を支え続けられなくなると、乃愛は背中からテーブルに倒れた。
「ダメ……っ、はぁ……あっ!」
 躯全体に、熱が籠り始めていく。
 久しぶりに全身を襲ってくる甘い痺れを感じると、頭の回転も悪くなり、乃愛は送り込まれてくる快楽のことしか考えられなくなった。
 秘部の襞に沿って指を動かすたびに、クチュクチュと淫靡な音が鳴り響く。
「洪水だな……乃愛」
「そんなことを、言わないで!」
 息も絶え絶えに答えると、叶都は乃愛の腰を片手で抱き上げた。空いた手で、一気にパンティを引き下ろす。
 きっと、いやらしく愛液が糸を引いているだろう。叶都が大きく上下に愛撫をしていたために、茂みまで濡れているはず。
 そんなにも感じてしまったことに恥ずかしく思ったが、ピクピク蠢く秘部を見せるように大きく足を開くよう促されても、乃愛は拒もうとはしなかった。
「どれぐらい男を……受け入れていない?」
 その言葉に、乃愛は大きく息を吸い込んだ。
(わたしが、他の男性に抱かれていたと思ってるの? 叶都からもらった指輪を、肌身離さず、ペンダントトップとして身に付けていたのに?)
 乃愛の表情を見て、叶都は嬉しそうに微笑んだ。
「勘違いしないでくれ。乃愛が、すぐに俺を受け入れられるか……それだけが知りたかったんだ」
 そう言うなり、叶都は中指を挿し入れて舐め始める。その指を抜くと、今度は乃愛の秘部に軽く触れて、ゆっくり膣内に挿入した。
「あああっ……」
 過去の記憶を呼び起こすように、叶都はゆっくり抽送を始める。
 膣壁を摩り上げ、乃愛がどのくらい感じているのか確かめるように動かした。叶都が指を動かせば動かすほど、乃愛の躯は呼応するように小刻みに震えていく。
「ダメ! 叶都……わたしっ、……っく……はぅ、あっ、あっ……」
 ビリビリした甘い電流が、叶都の抽送のリズムに合わせて襲いかかってくる。膣壁が波打つように大きくうねり、もう耐えられそうもない。
 こんなにも切羽詰まった感じを覚えるのは、初めてだった。
 愛し合うことが素晴らしいと思えるようになってからでも、笑い合ったりじゃれ合ったりしてから、一緒に飛翔するのが常だったから。
(お互いに離れ離れになっていた? それとも……愛し合う意味が、昔とは全然違うから?)
 乃愛は手の甲で口元を押さえ、なるべく喘ぎ声を漏らさないようにしたが、叶都の指の動きに翻弄されていては、もうどうにもならなかった。

2011/09/21
  

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