4万HIT記念企画♪
「ねぇ、莉世たちはどういう体位でしてるの?」
「彰子!」
莉世は、窘めるようにあたしを睨む。
でもさ、知りたいじゃん! どこまでならOKで、どこまでならNGなのか。
もちろん、あたしが寛を好きならどんな格好でも愛し合ったらいいんだけど、やっぱり気になるんだよね……。
雑誌を数ページめくると、いろんな体位の図が表示してあった。
「あたしは、まだコレしかシタ事ないんだけど……」
誰でも知ってる体位を指差す。
「コレは、動物みたいだから嫌。コレは……自分で動くんでしょう? それって何かね〜」
どんどん莉世が顔を真っ赤にする。
途端、両手で顔を覆った。
「もう、彰子ったら! ……わかった、わかったよ」
莉世が、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。
「絶対……絶対一貴にこの話はしないでよね?」
もちろん! あたしだって、寛に告げ口されるのは嫌だし……何と言っても、これは女同士の話なんだから。
彰子は、真剣は表情をして頷いた。
「わたしは、バックは嫌だった。だって愛し合ってる感じじゃないもの」
まぁ、確かに欲望のはけ口って感じだよね。
「コレは、シタ事ないけど……よく似たコレはさせられた」
え〜っと、座って?
「あのね……、コレははっきり言って……癖になるかも」
そう言うと、莉世は顔を赤らめて運動場を見る。
「癖って?」
唇を噛み締めて、恥ずかしさを堪える莉世を見て……あたしでさえ可愛いと思ってしまった。
はぁ、こんな表情出来るなんて羨ましい……あたしには無理だ。
「自分で、動くわけだから……その〜、極限まで翻弄されて、もうめちゃくちゃになっちゃうの。でも自分ではどうにも出来なくて」
え〜と、え〜と、つまり、
「イケそうで、イケない?」
莉世がコクコク頷く。
そっか〜、そうなんだ。もちろん人それぞれだってわかってるけど、こうして聞くとやっぱり違うなぁ〜。
「でも、これはやめといた方がいいよ」
突然、莉世がある図を指した。
えっ、ええっ〜? 莉世ってば、こんな事もシテるの? さすが、センセだよ……やる事が違う。
「確かに、……え〜と、感じるかも知れないけど、痛いの。本当に痛いのよ」
何が痛いんだろう?
「……処女をあげた時みたいに?」
一瞬、莉世がその時の事を思い出したのか、一気に顔が青ざめた。
「ち、違う……そうじゃなくて」
あれ? 何だろ、この取り乱し方。
「センセに処女をあげた時、乱暴されたの?」
そう聞いた途端、莉世の目はショックに見開かれ、どんどん涙がたまってきた。
えっ? えっ?! あたし、何か変な事言った?
「ちょっと、莉世。何も泣かなくても……え〜と、え〜と、ほら、あたしも寛に処女をあげたんだけど、その後2年はシテなくてさ、処女みたいに痛かったよ。その後もまだ痛かったし。寛も、あたしがシテなかった事がわかったみたいで、まぁ喜んではくれたけど」
やだ、何言ってるんだろう、あたし。バカじゃないの?
チラッと莉世を見ると、唇を戦慄かせている。
「男の人って……処女かどうかってわかるものなの?」
突然のその言葉に、あたしは一瞬呆気にとられた。
……はぁ? いきなり、何?
「う〜んと、寛は……あたしが処女をあげてなかったら、そのぉ〜先日の時に処女と間違ってもおかしくなかったって。ほらっ、あたし痛がったしね」
とそこまで言って、思わず顔を赤らめた。
何言ってるの? これじゃあ、まるで京都でシテきましたって宣言してるようなものじゃない! あぁ、あたしってバカだ。
「わたし、痛がらなかった……一貴と初めて愛し合った時」
えっ? 何……それって、どういう事なの? ………ま、まさか!
「センセが、初めての相手じゃないって事?!」
莉世が頷く。
「一貴にも……バレてるかなぁ」
莉世の頬に涙が零れた。
うわっ〜、莉世ってススんでたんだ! でも、ずっとセンセだけを愛してたって言ったよね? それなら何で他の男と?
あぁ、それはいいや。とりあえず、莉世の気持ちをどうにか軽くさせてあげないと!
「え〜と、あたしは男じゃないからわからないけど……アソコの締まり具合でわかる人もいるって……コレに書いてあったけど」
「そんなの、わからないよ」
莉世は、ハンカチで涙を拭う。
どうしよう、どうしよう……何だか言えば言うほど、とんでもない方向へ進んでしまいそう。
「センセは何も言ってないんでしょ?」
「うん」
あたしの勘では、あのセンセなら相手が処女か経験豊富なのか、絶対わかると思う。だけど、そんな事、莉世に言えるわけないし……。
「莉世! 男と女はね同等なんだよ。相手が処女かどうかなんて、気にすること事態が間違ってるの。寛だって、童貞じゃなかったし、センセだって童貞じゃなかったと思うよ」
「それはわかってる」
あぁ、やっぱり? あれだけいろんな体位をしてたら、そりゃぁわかるよね。
彰子は、莉世の言葉の言外に含まれた意味に、全く気付かなかった。
「気にする事ないよ。だって、今は莉世はセンセだけだし、センセも莉世一筋なんだからね」
「っん、ありがと」
まだ悲しげだが、微笑みを作る莉世に、ひとまず安心した。
取り乱した莉世を見て、もうこの雑誌は鞄に入れようと思った。
また、別の機会にいろいろと話すしかない。
その機会は、いくらでもあるんだから。
――― ガラッ。
二人は、その音がした方向を見た。
そこには、何と担任が立っている。
「三崎と……莉世か、いったい何してるんだ?」
や、ヤバイ!
彰子は、二人の間に置いてあった雑誌をすぐに鞄に入れた。
「何だ? 今のは……三崎、見せろ」
ひぇ〜、見せれません、絶対センセには見せれません! もし見つかったら何言われるか……。
「一貴には関係ないよ」
唇を震わせて言う莉世へと、センセの視線が逸れる。
「莉世? どうした?」
センセは、まだ涙で光る莉世の目を覗き込む。
手が伸びてきて、莉世の頬を掴んで………うわぁ〜、こんな大胆なセンセ初めて見たよ! もちろん、莉世の彼氏だってわかってたけど、こうして目の前でらぶらぶぶりを発揮されると、あたしも照れちゃう。
「何でもない」
「莉世。俺らが京都で……どういう話をしたのか、覚えているよな?」
な、何? 京都で話って……センセが追いかけてきた事だよね? 興味津々!……なんだけど、何だかあたしってば蚊帳の外だよね。
あっ、もしかしたら……。
突然、莉世がセンセの首に抱きついた。
そして莉世の目と視線が合う。
は・や・く・い・っ・て! ド・ア!
声を出さすに口パクで言うのを見て、頷いた。
そして、莉世のその演技を見て、思わずニヤッとしてしまった。
莉世も、センセにあの雑誌を見て欲しくないんだ。もちろん当たり前だと思うけどね。
彰子は、莉世にウインクして手を振ると、そそくさとその場から退散した。
一人で校門を出たが、ニヤニヤは止まらなかった。
ふぅ〜ん、莉世ってばあんな風に、センセに抱き付くんだ。あたしも寛にあんな風に抱きついたら……どう思うかな。
それにしても、センセってば……莉世に振り回されてる!
お腹の底から、笑いが込み上げてきた。
あの冷たいセンセが、莉世に翻弄されてるのかと思うと、楽しくてたまらない。
意外な一面を見る事が出来て、センセも一人の男なんだと実感した。
ただの冷たい男ではないって。
彰子は振り返って校舎を見上げた。
それだけ、莉世の事を愛してるんだよね。まぁ、あれだけいろんな体位をしてるって事は……莉世を悦ばせようという事だと思うし……何だかんだ言っても、上手くいってるんだね、あのカップル。
うん? あっ、そっか〜、寛もあたしを悦ばせようと思って、いろいろチャレンジしてくるんだ!
あたしを……愛してる、から?
ニヤニヤだった表情が、一変して幸せの微笑みへと変わる。
明日だね……寛と会えるのは。
あぁ〜、早く寛に会いたいよ。