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『続 ・Ring of the truth 〜真実の想い〜』【2】

 一瞬、沈黙の間があった。
 
 しかし、すぐに彰子は口を開いた。
「だけど、あたしはちゃんと寛のアパートの住所に出したんだよ? 毎月毎月……1日にはちゃんと投函してた」
 どういう事なの?
 彰子は、思いつきたくなかった事を思いついてしまい、顔を一気に青ざめた。
「もしかしたら……、同棲してるのかも」
 彰子は莉世を見た。莉世の表情も曇ってる。
 あぁ…莉世もあたしと同じ事を思ってるんだ……。同棲してたら、手紙なんてたやすく手に入る、見る事も出来る……こうやって送り返す事も出来る!
 ダメ、涙が溢れそう。
 唇を噛み締めながら、瞼を閉じた。
 寛の気持ちがわからない。どうして彼女だからって、手紙を見せる事が出来るの? どうしてこんな残酷な手段を用いたの?
 悲しみと苦しみがごちゃごちゃになり、彰子は意思を保とうと両手をきつく握った。
 
 突然肩を抱かれた。
「彰子、まだ諦めちゃダメだよ。まだこれが真実なのかはっきりしてないんだから」
「だけど……」
 彰子は潤んだ目で開けると、真剣な表情で見つめる莉世の目と合った。
「彰子! 彰子は彼女に戻れなくてもいいから、真実を告げたいって言ったんでしょう? それなら、こんなの全部関係ない。こんな事されたって、言いたい事を伝えればいい!」
 彰子は目を逸らした。
 あたしだって、これが逆の立場なら莉世に言ってる。行動を起こせって。だけど、自分の事になると……こんなに情けなくなるなんて。
 
「期末テスト終わったら、1週間休みでしょう? その時、行こう。京都へ」
 彰子は、恐怖の息を飲んだ。
「ダメ、出来ない、あたし出来ないよ。会えない、会いたくない。もし、拒絶されたらどうするの? そんな事になったら、あたし耐えられないよ!」
「大丈夫。……その時は、わたしが久木さんを引っぱたいてあげるから」
 えっ? 引っぱたく? それって……まさか。
「莉世も一緒について来てくれるの?」
 莉世は、にっこり笑った。
「もちろん!」
「だけど、莉世外泊は駄目なんじゃ」
 莉世はため息をついた。
「うん。だけど、それは一貴との外泊が駄目なだけかも知れないし。わたしだってもう高2だよ? 友達と旅行したっていいんじゃない? それに、アメリカにいた時の事を思ったら、あまり関係ない……って思うし」
 莉世がここまで言ってくれる事に、彰子は嬉しくて仕方なかった。
 あぁ〜、親友って本当にいい、最高だ。
 どうして、あたしは親友を作ってこなかったんだろう。……だけど、今あたしには莉世がいる、大好きな親友が。
 
「ありがとう、莉世……」
 涙ぐむ彰子に、莉世がいきなり抱きついてきた。
「いいの。わたしだって一貴の事でいろいろ相談にのってもらったじゃない」
 彰子は苦笑いした。
「まぁ、そうだけど……ねぇ莉世?」
「ん?」
「あたし……ハグって初めて」
「あぁ、ごめん! 嫌だった? 向こうのクセがまだ抜けてないみたい」
 慌てて離れる莉世に、彰子は心から笑った。
「ううん、嫌じゃなかった。何ていうんだろう……安心したって感じ」
 そんな彰子に莉世は微笑んだ。
「うん、わかる……わたしもね、向こうで突然された時は驚いたんだけど、慣れると意外にほんわかするの。寂しい時、辛い時、悲しい時にされると、本当にリラックスして……あぁ、わたし一人じゃないんだ、誰かが側にいてくれてるんだぁって思ってしまうと、もうハグハグばかりしてた」
 肩を揺らしながら笑う莉世に、彰子も自然と笑みが零れた。
「とりあえず、期末頑張ろうね。そうしないと、京都へ行けなくなりそうだもの」
 莉世が、彰子の肩をポンポンと叩いた。
 
 
 こうして、二人は期末テストが終わったら、一緒に京都へ行く事になった。
 期末まであと1週間足らず……。
 あと少しで、あたしと寛との区切りがつくんだ……。
 怖い……どうなるのかわからない。だけど、このままなんていられない。
 はっきりしたい……、はっきりさせなければ!
 彰子はカレンダーの12に赤丸をつけた。
 莉世と話し合って、テストが終わったその日に出発しようという事になったからだ。
 そういえば、莉世はセンセと約束してないんだろうか? それに莉世の様子も、ちょっとおかしかったなぁ。よし、次はあたしが聞いてあげよう。莉世の力になってあげよう。
 もし、センセが悪いんなら……あたしがとっちめてあげなくちゃ。
 
 だけど、その前に……テストが待っている。

2003/06/22
  

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