第二章『華の蜜に誘われて』【13】

 襞に沿って摩られるたびに、クチュクチュと淫猥な音が乃愛の耳に届く。
 そこで初めてパンティがびしょ濡れになるぐらい愛液が溢れていることに気付いた。
 もちろん今までにも何度か濡れたことはあるけど、ここまで濡れたことは一度もない。
「あっ、あっ……叶都、ダメッ……っんん、ふぁう」
 叶都が乳房へと愛撫を止めると、肋骨、おへそ、平らなお腹へとキスの雨を降らしていく。
 次はどこへ進むの?――と思ったら、叶都はキスを中断してパンティ越しの秘所に熱い吐息を吹き替えた。
「ひゃぁ!」
「凄いびしょ濡れだ。乃愛の愛液で生地が透けて、その奥まで見ることができる。勝手に戦慄いているのが、こっちからでもわかる」
「バカ! どうしてそんなことを言うの? わたし、……あああっ!」
 叶都がパンティの上から舐め出した。ピチャピチャと音を立てながら、微妙なタッチで秘所に刺激を与えてくる。
 乃愛の脳裏に、猫がお皿に入ったミルクを舐めている光景が浮かんだ。猫が舌を何度も出しては引っ込める動きと実際に襲ってくる刺激が重なり、乃愛は激しく身悶えた。
「叶都! 汚いっ……んん、っぁん!」
 叶都の頭を押しやろうとするが、手に力が入らない。送られてくる官能的な甘い波に、初心者の乃愛が抗えるはずもなかった。
 息ができなくなり、意識が遠のきそうになる。
 その時、乃愛の秘所に顔を埋めていた叶都の愛撫が止まった。それでも、乃愛の躯は甘い余韻を受けて、躯は小刻みに震えていた。
 叶都の手が乃愛の腰をごそごそと触り出したのをきっかけに躯から力が抜け、ふぅ〜と息を吐き出す。
 いったい今のは何だろう? まさか、こんなにも淫らに反応するなんて思いもしなかった。しかも、あんなにもえっちな喘ぎ声を漏らすなんて!
「……ううっ、恥ずかしい」
「相手は俺なんだ。恥ずかしがる必要なんて全くない」
 声に出していたと気付き、乃愛は顔を真っ赤にさせた。こんな表情を見られたくなく、乃愛は咄嗟にシーツに顔を埋める。
 軽く動いたことで、先程とは違って腿の付け根に冷たい風があたること気付いた。
 何でこんなにも冷たいって感じるのだろう?
 ゆっくり叶都へ視線を向けると、彼の手に握っているピンク色の布地が目に飛び込む。思わず、ハッと息を呑み込んだ。
 いつの間にか、叶都が濡れたパンティを脱がせていたのだ。
 わたしのあそこ、叶都に丸見えじゃない!――声にならない声を漏らして、スカートの裾に手を伸ばす。
 大切な部分を隠そうとしたが、乃愛よりも叶都の動きの方が早かった。まだ、誰にも触れさせたこともない秘所を、叶都が指の腹で直に摩る。
「っんんん!」
 瞼をギュッと閉じる。敏感な秘所に直接触れられた感触は、パンティ越しとは全く違っていた。
 今までよりもさらに親密なことをしていると、乃愛は否応なく思い知らされた。
 でも、当然これで終わるわけがない。
 叶都は、乃愛の足首を持って膝を立つように促す。さらに、大きく股を開くように動かされた。
「か、叶都……ヤダ」
 乃愛に目も暮れず、叶都は再び乃愛の秘所に顔を寄せた。とめどなく溢れ出る愛液を、舌で舐め始めた。襞に沿って、下から上へとすくうように動かす。
「あああっ……。かな、と……っんん、やぁ、ダメっんん!」
 さっきとは比べ物にならない快感が、乃愛を襲ってくる。
 叶都が、乃愛の秘められた部分に顔を埋め、美味しそうに一滴残らず蜜を舐めている。
 目に見えないのにその行為を想像しただけで、さらに官能を刺激された。乃愛は、どんどん快楽の世界に引きずり込まれていった。
 天を向いていた膝が、重力に引っ張られるようにどんどん開いていく。カエルがひしゃげたような格好になっているとは気付かず、乃愛は初めて味わう快感に恍惚としていた。
 もっと……、このままめちゃくちゃになるまで押し上げて欲しい――とさえ思うほどに。
 だが、叶都は突然舌での愛撫を止めた。
「……やぁ」
 乃愛の口から、勝手に拒絶の喘ぎが漏れる。
 もっとして欲しい――とも取れる甘い声に恥ずかしさを覚えたが、いつまでも引きずることはなかった。
 叶都が、愛液で濡れた襞を指で押し開いたからだ。
「あっ!」
 叶都の指の力に負けないよう、ピクピクと蠢いているのがわかる。
 ヤダ……恥ずかしい! そ、そんなとこまで……見るなんて。
 とめどなく溢れ出てくる愛液を指に絡めると、叶都はそのまま一気に挿入した。
「イヤ! ダメッ……んんんっ、あっ、あっ……くっ!」
 お尻から頭の先へ駆け抜ける甘い電流が、乃愛の躯を支配していく。
 自然と腰が浮いてしまうほど、叶都がもたらしてくれるその快感はとても素晴らしかった。
 もう、叶都が刻む挿入のリズムしか考えられない。
「いいっ! ぁん……あっ、そこ……っく、っんんん!」
 最初こそゆっくり抽送を繰り返していたが、だんだんそのスピードが速くなってきた。
 乃愛の喘ぎ声だけでなく、部屋中に愛液と空気が混じり合った淫猥な音が響き渡る。
「もっと感じてくれ。俺の手で、さらにもっと高く……」
 懇願の声が聞こえた途端、乃愛の中で何かがいきなり弾けた。ビクッと躯が跳ね上がり、四肢が勝手に硬直する。閃光が四方八方に飛び散り、閉じた瞼の裏ではその眩しい光に包まれた。
 
 
 しばらくすると、残像がチカチカと点滅し始める。
「今のは、いったい?」
 荒い息を繰り返しながら、乃愛は囁いた。
 縋るように見つめる乃愛の目を、叶都は嬉しそうに見下ろしてくる。
「たったあれだけでイクとは思わなかった。感じやすい躯なんだな。次は、少しきついかも知れないが……」
 それはいったいどういう意味なのか訊こうと思い、視線を叶都へ向けた時だった。いきなり目に飛び込んだその光景に、乃愛は鋭い音を立てて息を吸う。
 いつの間にボクサーパンツを脱いだのだろう。
 引き締まった腹部の下にある茂みから、叶都自身が勢いよく勃ち上がっている。叶都が動くたびに揺れるものの、それは頭を下げようとはしない。
「かな、と……わたし……」
 まだ気怠さを感じていて動けない乃愛は、ただ拒絶するように頭を振った。
 初めてなのに、そんなものは受け入れられない――と伝えるように。
「乃愛、俺を信じて……」
 叶都自身が、ゆっくり乃愛の膣内に侵入してきた。指とは違って、大きな遺物が膣壁を押し広げていく。
「ああぁ……」
 ベッドに手をつく叶都の二の腕を掴んで、乃愛は呻きながらその侵入に意識を集中させた。
「もっと力を抜くんだ。そうしなければ、乃愛が痛い思いをする!」
 叶都は、苦悶に満ちた表情で乃愛を見下ろしてくる。彼の額に、汗が浮かんでいるのが見て取れた。
 乃愛ばかりが大変だと思っていたのに、叶都もこんなにも苦しんでる。
 わたしが初めてのせいで?――その瞬間、叶都を想う気持ちが溢れ出そうになった。
 同時に叶都が腰を落として、一気に乃愛の膣奥まで挿入する。
「きゃああぁぁーーーー!」
「乃愛……大丈夫か? ……乃愛!」
 乃愛の目尻から涙が零れ落ちた。前触れもなく破瓜の痛みに襲われ、彼女は為す術がなかった。
「すまない……、なるべく痛くしないようにしたかったのに」
 叶都が乃愛から離れようとするのを感じると、それを止めるように抱きついた。
「大丈夫……。叶都を愛しているから耐えられる! だから、叶都もわたしを愛して。他の誰かではなく、わたしだけを愛して」

2011/04/25
  

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