『サクラ咲く、ココロの華』【3】

 どうしよう……
 何故? 何故、急に呼び出してまで……わたしを抱く気になったの?
 
 莉世は、躰中を欲望で支配されながらも、頭の片隅で一貴の……この理解しがたい行動を分析しようとした。
 でも、一貴の荒い息遣いに混じった自分の喘く声が部屋に響き渡っていると、考えたくても考えられなかった。
 
 
「上半身だけでいい。躰を上下に揺すれ」
 一貴の声が、莉世のココロを貫くように、ストンと飛び込んできた。
 えっ? 上下に揺すれって……なん、で。
「はぁぅ……」
 漏れる声をグッと押し込み、莉世は思い切り頭を振った。
 一貴の言ってる意味がわからない。何故、揺するの?
 それに……やっぱりやだぁ。ココで抱かれたくない。
 こんな冷たい一貴に、抱かれたくない。
「揺するんだ」
 その声をひそめた冷たく鋭い声に、莉世はビクッとなった。
 莉世は薄い膜が目を覆うのを防ぐように、唇を噛み締めた。
 ココで抱かれたくない。わたしを冷たく見る一貴に、抱かれたくない。
 何より、わたしに対して怒ってる一貴に、抱かれたくない!
 でも、これ以上一貴を怒らせたくなかった。
  これ以上、冷たい目でわたしを見て欲しくないよ。
 それなら……一貴がわたしを望むのなら……ココで、えっちして……早く終わらせる方がいい。
 莉世は意を決して、とりあえず一貴の望むように振る舞おうと思った。
 それが、惚れた弱み……。
 一貴を愛してしまった……わたしの弱みだ。
 
 莉世は、一貴に言われた言葉を、ココロの中で反覆させた。
 揺するって……どうすればいいの?
「早くしろっ」
 一貴の苛立たしい声が、莉世の躰を震えさせた。
 莉世は歯を食いしばると、ジャンプするように上下へ揺らした。
「乳房を揺らすように」
 ひどい! 何で……一貴は、こんな事を。
 莉世は潤む目の涙を振り払うように、何度も瞬きをして涙を振り払った。
 そして、乳房が揺れるように上下に揺らすと、一貴の手が伸びてきた。
 乳房を包むと、薄いレースのカップを乳房の下へずらした。
 一貴は、揺れる乳房を利用して、カップをずらしたかったのだ。
 露になった乳房を一貴はジィーと見つめ、 両手で乳房を揉み始めた。
「っんっ!」
 すぐ、乳首がピンと突き出た。
 一貴は、そのまま顔を埋めるように、莉世の乳首を口に含んだ。
「っぁぁ……、ぁん……やっ、ぅんん!」
 莉世は、自然と一貴の頭を抱えた。
 
 
 一貴のその性急な求めに、躰はついていっても、莉世のココロはついていけなかった。
 まだ、わたしたち……1回しか愛し合ってないんだよ? なのに、何故? 何故こんな乱暴に?
「っぁはぅ……」
 声を出しちゃいけない……出したら、壁を通して他の人に聴かれちゃう!
 それはわかってるのに、溢れだす喘ぎは止めようがなかった。
 一貴が乳首を唇で挟み、そして舌で転がし、チュッチュッと吸う。
 その淫らな音が、一貴の荒い息遣い・莉世の喘ぎと混じり合い、一貴の部屋に充満していく。
 莉世の膝は、力が抜けそうだった。
 ガクンッと崩れ落ちそうになるのを、必死に堪えていた。
 莉世の秘部は、もう濡れてビショビショになっている。
 なのに、一貴はそこに触ろうとはしなかった。必死になって、乳房だけを攻めている。
「っああぁ! ……っんん」
 奥から生み出される欲求が、一貴を求めて微かに腰が動く。
 触れて欲しい……一貴に満たして欲しい。
 なのに、一貴の手と唇は乳房ばかり攻めたてる。
 莉世の指が麻痺してきた。
 何度も何度も駆け巡る甘い痺れが、もう自分ではどうにも出来なくなってきたのだ。
「はぁう……かず、っき……っあ」
 まるで、もがき苦しむ莉世を、岸壁の上から一貴に見下ろされてる気分だった。
 必死で手を伸ばすわたしを、一貴は傍観してる。
 もう少しで手が届くのに、乱れて歓喜に震わせるわたしを……一貴は何もせず見てるだけ。
 駄目……もう、どうにかして!
「ぁふ……あっ、あっ……っんん!」
 莉世が目を瞑った途端、膝がガクッとなり力が抜けた。
 
 
 急にお尻に冷たい感触が伝わった。
 意識が戻ると、いつの間にか一貴の大きなデスクに横たわっていた。
 しかも、足をM字に開かされて。
 一貴はその間に立ち、手を伸ばして莉世の乳房を執拗に揉んでいる。
「ぁああ……いやっ」
 もし、天井に鏡があれば……今自分がとんでもない格好でいるとわかるだろう。
 制服を脱ぎ捨てないで、肌を露出させただけの姿。
 何てことだろう。よくポストに入ってる、えっち写真と一緒じゃない!
 莉世は、ハッとした。
 一貴って……もしかして、そういう趣味があったの?
 っとそこまで考えて、莉世はその考えを振り払った。
 忘れてはいけない……一貴は言ってたじゃないの。高校生なんて子供にしか見えないって。だから、一貴がこういう制服プレイの願望があったって事は絶対ない。
 じゃぁ……何故わたしにだけ?
 一貴が、莉世の乳首を転がした。
「っぁ……」
 莉世は背を弓なりにさせたと同時に、腰が浮いた。
  ドクドクと流れていくのがわかる……もしかしたら……一貴のデスクに滴り落ちてるかも知れないと思うと、心臓が激しく高鳴った。
 一貴はスカートをたくし上げると、莉世の秘部を真面に見た。
 見られてると思うだけで、躰が奮える。一貴が欲しいと訴えている。
「っはぅ……」
 一貴が割れ目に沿って、今日初めて指で撫で上げた。
「はぁぁぅ……っぁんっ!」
 荒々しい手つきと違い、秘部に触れる一貴の指は優しかった。
 その優しさが、莉世を恍惚の世界へと誘う。
 
「俺に触れられて、濡れてるって言うんだ!」
 怒りを抑えた一貴の声が、莉世の胸に突き刺さった。
 しかし、全速疾走したかのように上下する広い胸と、一貴の目に……愛情と欲望と痛みが入り交じっているのに気付いた途端、莉世のココロの中で変化が起きた。
「一貴が……わたしをこんな風にしちゃったんだよ?」
 莉世の口から、掠れた声だったが、すんなり言葉が出た。
 何故、一貴が痛みを感じてるのかわからない。何故、こんな態度を取るのかわからない。
 だけど、一貴がわたしの全てを欲してるのがわかった。だから、一貴が望む言葉を言ってあげたかったのだ。
 突然一貴が莉世の上にのしかかり、唇を奪った。
 莉世は自ら唇を開き、一貴の舌を誘い、一貴の頬を両手で覆った。
 すると、すぐに一貴が反応して舌を奥まで挿入した。
「っんふっ……、かず…きぃ……ぁぁっ」
 一貴の手は何度も乳房を揉みながら、体重をかけた。
 一貴の唾液が、莉世の口の中に入り、どんどん溜まっていく。
「っん!」
 莉世は一貴の頬を押し上げて唇を離すと、溜まった唾液をゴクンッと飲み干した。
「ああぁぁ」
 一貴は、莉世のその行動を見て感嘆の声を発し、莉世の露になっている首筋に顔を埋めた。
 莉世は愛おしさが込み上げ、一貴の髪に指を埋めると優しく動かした。
 一貴はガバッと起き上がると、デスクの引き出しを開け、中から四角い袋を取り出した。
 コンドームだ。
 一貴はそれを破ると、すぐにそそり勃つ自分に装着した。
 莉世の目が、一瞬で陰った。
 どうして……学校にコンドームなんか置いてるの?  どうして?
だが、一貴は莉世の表情に気付かなかった。
 
「俺の腰に、足を回して……」
 そう言うと同時に、一貴が腰を落とし、十分に潤った莉世の膣内(なか)に、勃起した自身を挿入した。
「……っくぅ!」
 一貴の表情が、苦しみで歪む。
「っぁう…」
 莉世は、大きくなった一貴を迎え入れながら、足を腰に絡みつけた。
 一貴が奥まで挿入し終えると、一貴の胸が激しく上下に揺れた。
「っく……はぁ」
 その何ともいえない表情を見て、莉世の胸がドキドキした。
それと同時に、一貴を咥え込んだ膣壁が波打つように動く。
「っつ……もっと抑えるんだ、莉世」
 欲望を抑え込んだ声で言うが、莉世にはどうしようも出来なかった。
 勝手に動くのだ。
 一貴の全てを包むように、吸い上げるように動くのだ。
 どんどん早く波打つ膣壁に、一貴は堪えられなくなり、緩やかに腰を動かし挿入を繰り返した。
「っんんん。はぅ……ぁぁっ……ぁんっ!」
 既に溢れ出すほど濡れていた為、一貴が動くと淫猥な音が部屋に響いた。
 どうしてこんなに濡れるんだろう?  してはいけない学校でしてるって思うから? 誰かに聞かれるかもしれない……そんな秘密の場所で抱かれているから?  
 喘ぎ声を出してはいけないと思えば思うほど興奮して、声を止めることなど不可能に近かった。
 一貴がスピードを早めて、あの莉世が感じる場所を刺激した。
「ああっ! だめ……そこ、は……あんっ……やぁ!」
 頭を振ってイヤイヤと言うが、一貴は攻めを緩めようとはしなかった。
「ココ、だろ? …はっ……っくぅ」
 莉世は、足に力を入れて、一貴の腰を締めつけた。
「ぁう……んっ、だめぇ……バラ、バラに……なっちゃう!」
 一貴の背に、思い切り爪を起てた。
 
「きゃぁ!」
 一貴が、突然莉世を抱き起こしたのだ。
 莉世が一貴の首に捕まると、彼は繋がったまま莉世を抱えあげ、そのまま歩いて、後ろの壁に莉世を凭れさせた。
「ぁん……っんんん!」
 重力で下に落ちようとする躰のせいで、一貴の先端が膣の一番奥を突く。
 それが痛かった。
 莉世は必死になってその痛みから逃れようと、腰にいっそう足を巻きつけた。
 上に這い上がろうと、一貴の首を押しさえした。
 すると、一貴は目の前にある莉世のぷっくりした乳首を唇で挟んだ。
「はぅ!」
 莉世の躰がビクッと奮える。
 それに合わせて、躰がガクッと下がり、奥に一貴の先端が触れ痛みが増す。
 一貴は、莉世のお尻と腰に手をあてると上下に揺すった。
「きゃぁ! ダメ、……かずっき……ぁん、っく……んっ!」
 前と違う……全く違う動作が、莉世の膣を圧迫させる。
 そのせいか、膣壁が異様に激しく一貴を締め上げた。
「っくぅ……莉世、そんなに……締め上げるんじゃ、ないっ」
 一貴は自分の悦びに振り回されないように自制し、耐えるように顔をしかめるが、莉世を揺するのはやめなかった。
 さらに、もっと……もっと激しく上下に揺する。
「はぅ……ぁんん! 痛ッ……ぁう……あっ」
 莉世は、苦痛に混ざった……躰を駆け巡る歓喜に顔を顰めた。
 痛いのに、やめて欲しいのに、何でこんなにイキそうに感じるの?
 莉世の蜜は一層潤い、一貴の滑りを補っている。
「うっっ……お前、感じ過ぎ……だ。すごいっ」
 そう言われただけで、莉世の下腹部の奥がキュンとなった。
 一貴は舌を出して、莉世の乳首を弄ぶ。
 その全てが、莉世の躰を甘い電流が駆け巡った。
「……あっ……、かず、きぃ、……もう、だめぇ……っん!」
 一貴が、莉世の言葉を受けて、さらに激しく莉世を揺すった………そして、左手を腰に添えたまま、右手を二人の重なり合った部分に手を伸ばした。
 莉世が背を逸らせて、自ら躰の解放を求めた。
 
 
 その時!
 
――― コンコンッ。
 
 一貴の荒い息遣いと、莉世の甘い喘ぎ、服が擦れ合う音に……チュプチュプという淫猥な音が混じった……一貴の部屋に、重厚なドアの音が響いたのだ。
「一貴? ……あっ、水嶋先生? いらっしゃらないんですか?」
 ドアの外から、一貴に向けて声が発せられた。
 一貴は苦しげに莉世を揺するのを止め、ジーッと動かなくなった。
 莉世はあまりにも突然な出来事に、一貴を見下ろす。 
 一貴の欲望に輝いた目と、不安げな莉世の目がばっちり重なった。

2003/04/03
  

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